This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

Thrill Me〈スリルミー〉東京公演レポ〜1月

 

 

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しょっぱなから長すぎたので2つに分けました。

続きです。
年末最後の「幼い
2人」がすごく腑に落ちて、これでいくのかと思ったら、

年明けたら全く別のお話になっていてとにかく驚いた。

なにこれ。聞いていないんですけど?私も彼も、別人なんですけど。

と言うことで、年明けの2人です。

 

4、パワーゲーム(1/4)

19歳の彼はグッと大人っぽくなって、19歳のエリート学生でした。

決して彼に負けていない。

やることも言うことも対等で、(もしくは対等になろうと背伸びをしていて)

彼にやり込められても、やられっぱなしではない。

 

「君の弟に・・・」

 

のセリフを強調して、果敢に彼を挑発する。

 

自分たちが天才であると自覚して、それが鼻につくほどの傲慢さ。

「お前ほどの天才ならそれくらいわかるだろう?」と言う彼の問いに、

 成河私ったら、「うん。」と声を出して肯定してたし。

周りと自分たちは違うと思っていて、2人は特別な2人と認め合っていたけれど、

そこに「愛」は感じられず、特別な2人の中でどちらが優秀か常に争っていた。

彼が私をやりこめた時の満足そうな笑み、そしてその彼を掌握した時の私の笑みの狂気が怖かった。

最初は些細な競争心が、行き着くところまで行った時の恐怖。

スリルミーの後、振り返った53歳私が見つめる先に、全てを焼き尽くした無残な野原が見えたような気がした。

個人レベルでなく、国レベルだったら、これが戦争なのだと思った。

いきなり大きな恐怖を突きつけられたようで、「今そこにある武器」を見た時のような背筋が凍るような気持ちになった。

 

とにかく対等な彼と私は新鮮で、そしてリアル。

リアル「ネイサン」と「リチャード」はこんな感じだったんじゃないかな?と思った。

 

5、スリルと言う名の快楽(1/10)

前回のパワーゲームを予想していって、またもやガラリと変わっていて翻弄される。

だから私(ringhun)は壊れた船のよう・・・

 

とにかく最初の初老の私が、完全53歳にきっかり合わせてきて、どきりとする。

そして枯れ具合が極上の大人の色気を醸し出していて、ときめく。

今日の53歳私、まだ何か心に野心を持っている?まだ瞳が輝いている。

なんだ?これ。どうした?

前回までの疲れ果てた初老の私はどこにいった?

19歳に変わると、前回通りインテリな天才なんだけど、どこか違う。

メガネをかけても、野鳥を見ていても、艶やかでかっこいんだよ。

彼が現れても、すがったり、よろめいたりしない。

そして彼に負けないくらいかっこいいんだよ。

なんだ?これ。どうした?

彼の方は相変わらず傲慢で冷酷なんだけど、やっぱり瞳が輝いている。

なんだ?これ、どうした?

まるで「風と木の詩」のジルベールとセルジュじゃないか!←わかる人だけでww

 

そして私が変わったからか、彼もガラリと変わったのですよ。

とにかく私を見る!見る!見る!

今まで見向きをしなかった人だとは思えないほど、私を見る。

私を突き放して、私の反応を見て満足の笑み。

私にキスして、本気に味わってるし、私が、求めようとした瞬間に突き放し(それは変わらずお約束)私の表情を見て満足の笑み。

火をつけて怖がる私を見て満足の笑み。

・・・ああ、あげたら永遠に出てきそうなくらい、とにかく何かをしては私を見て、

私の反応をみて満足の笑みを浮かべる私。

なに?めちゃくちゃ私を愛してるじゃん。超ドSに。

 

そして私はと言うと、彼のすることに怒り、悲しみ、怖がる。

その度に乱れる私はさらに色気を増して、私(ringhun)を翻弄するのです。

なんでなんで?

 

そして戻れない道へきたときに、ハッと気がついたのでした。

ああ、私は彼に怒り、おびえることに快感を感じているのだと。

 

ここはどこ~こか 道に迷って♪

呆然としていた私の瞳がキラリと光り、にっこり笑う。こわっ。

ああ、脅迫状を読む2人の恍惚の表情。

2人の喜びが重なった最も幸せな一瞬だと思った。

 

そうか。

2人にとって、このスリルゲームは、性的行為同じことだったのだと気がつく。

スリルミーのインタビューで、成河くんと福士くんが、「性的興奮や快感に似ていて、中毒性がある。」って言うくだりがあって、この回はまさにそれだと思った。

インタビュー聞いたときにドキッとしたけど、まさかそれを実行するとは・・・(個人的意見)

 

2人とも本当に大胆。

そうやって立ち振る舞いが変わると、彼と私の立場まで変わる。

スリルを与えて喜ぶ彼は見方を変えれば、彼は私に与える愛で、

彼がくれるスリルに溺れて、それをもっと求める私は、常に求める愛。

需要と供給でみれば、これ以上ないほどの理想のカップルで(笑)

このまま行けば、本当に幸せだったよね。

 

でも、その均衡が崩れたときに、2人の関係も壊れる。

そして行き着く先の虚しさと、やり切れなさには胸が痛いけど・・・。

ゾクゾクするほどの色気と艶を溢れ出していた私と彼を見て私(ringhun)的お得な回でした。

 

 

6、戻れない道を転がり落ちる~愛と復讐編(1/13

艶やかな53歳私を期待して、ちょっと淡白になった様子にまた肩透かしを食らう。

いや、枯れ具合は私好みなんですけど・・・瞳は虚ろ。

 

そして、19歳私は1番普通な青年で。リアル19歳。6回見た中で1番力が抜けている。

千秋楽に1番力を抜くことができる成河くんがすごいと言うか、らしい(笑)

そしてそれに合わせて登場した福士彼も、とても力が抜けていて、

私と彼の距離感が今までで1番近い。

文字通り幼馴染感があって、やり取りの中に付き合いの長さを感じる。

 

「さわって」「さわってください」

 

 今回一番おっ!となったところ。←そこか?

いや、本当にこのセリフは難しいと思うのですよ。

セリフ自体が生々しくて、いきなり出てくると聞いててむずがゆくなったりする。

今まで一度も(他のキャストも含めて)違和感を感じなかったことがなくて、

凄く不満に思っていたけれど、どう言えば納得するのかもわからなかった一言。

だって、この一言に彼と私の関係の全てが入っているんですよね。

 

今回の成河私。

ふざけているような、じゃれているような。

そんな雰囲気で、何気なく一言。

それが、本当にストンと胸にはまったのです。

 

ー・・・そうか、そう言えばよかったのか。

小さい時から一緒にいて、お互いの全てを知り得ている2人の関係。

そのあとの、私の手を取りひねりながら抱きしめる福士彼も、そんな感じが虹見てていて、そのやり取りに結びつきの深さと長さを感じる。

分かり合える唯一の存在を「恋人」と言わず「親友」と呼び、

「愛」と呼ばず、「友情」と呼ぶ意味。

今までそこにとても違和感を感じていたのが、一気に吹き飛んだ気分でした。

 

優れた知能、飛び級。周りはそれを褒め称えたかもしれないけれど、

学校の中ではむしろ「異質なもの」として扱われたのではないかと思う。

そして、自分たちもまた、自分たちが特別な人間だと自負していたから、

彼らには彼らしかいなかった。

私がつぶやく「奇妙な鳥が2羽」そのものだったのだろう。

 

今回の彼と私は、どちらかと言えば私の方が大人だった。

感情のままに衝動的に動く彼を、私はしかたがないなぁと言いながら寄り添っていた。

だけど、どこでボタンを掛け違えたのだろう?

闇の落とし穴は突然現れる。

盗難した時の彼の様子がおかしかったのに、私は強引に彼を押し倒してしまった。

私とて、もう我慢の限界だったのだから。

でも、そのことで私は彼のパンドラの箱を開けてしまった。

それまで抑えていた弟への殺意が飛び出してくる。 

 

弟に・・・ 

彼を挑発するときに利用していた私。

彼が弟を疎ましく思っていたのはわかっていた。

でも、私の目には彼も家族に愛されているように見えていたのではないかと思った。

彼も家族だ!

弟を殺すと言った彼を止めるために叫んだ私の一言は、本気で弟をかばっていた。

彼は不満があったかもしれないが、第三者の私には彼の家族は自分の家族と同じような家族に見えていたからこそ、彼の誤解をときたかったのではないかと思えた。

でも、愛されているか、愛されていないかは、

客観的視線から見えるものではなく当事者の主観だ。

あの日、弟のことで父と何かやりあったのかもしれない。

彼が本気で「弟」の存在を疎ましく思っていたことに初めて気がついた時、

彼をもう止めることはできないところに来ていた。

私は、もう二人は戻れない道に踏み込んでいたことを知る。

 

 

ーああ。今までの全ての行為は、弟を殺す欲求の転化だったのだ・・・。

彼は犠牲の子供を殺したとしても、次に、また弟を殺そうとするだろう。

彼はそれを実行するまで、このバカなことをやめないだろう。それなら・・・。

 

目指してものは 理想の場所

もし行けたなら

いつまでも2人 永遠の時間 そう信じてた。

 

あの時の19歳の成河私は、彼を止める唯一の方法を実行すること決意した瞳だった。

そして、それを思い起こす53歳の私からは、涙が溢れ出て、かすかに声が震える。

泣く〜〜〜〜!

 

ー全てを捨てても、彼と一緒に居られるなら・・・。

 

私にとってそのあとの行為は、彼を手に入れるというよりも、彼のためだった。

だから、殺人を犯した後の彼の恐怖と緊張はすごかった。

殺人もそうだが、そのあと彼に気づかれないようにメガネを置いていく姿まで見えるようだった。

そのあと、警察に捕まることもわかってはいたけれど、怖くて怖くてたまらなかったことも。 

彼の弱さわわかっているつもりだった。ある程度の彼の行動もだいたいわかっていた。

でも、離れない自信はあった。だから突き進むことができた。

 

だが、彼は私を裏切った。

「メガネがない」の時に、「お前だけだ」と突き放す彼の声に、「えっ・・・。」と言葉を失う私。

「俺を巻き込むな」と、私に全ての罪をなすりつけ逃げる彼は、私の予想外だった。

どんな状況になっても、彼が自分を捨てるなんて思いもしなかった。

 

待てよ!!!

 

私の悲痛な叫び。

彼の裏切りが、私の心に火をつける。復讐。

自首したのは衝動。私が彼への復讐心を感じたのは今回が初めてだった。

愛して、自分の全てを捧げた彼の裏切りを、どうしても許すことができなかった私。

取調室で、「思い直してレイ。」と、私を押し倒しキスをする彼の仕打ちが私の復讐心を煽る。

でも、彼のキスに一瞬溺れそうになる私に、彼への愛を感じるんだよねぇ。萌え。

 

死にたくない!!

 

独房で慟哭する彼の様子を、目を見開いて聞いている私の目から涙・・・。

そして目を閉じる。そこに愛していてもどうして許せない私の心に泣くしかない。

 

そして、この死にたくないの福士彼、本当に素の19歳彼そのもので、圧巻でした。

 

護送車の中で全てを告白したのは彼への復讐。

彼をやり込めたことで、彼が悔い改めて私に向き合ってくれると思っていた。

もう許すから、一緒に幸せにこの籠にいようと。

だけど、彼は私に決別した。

 

その時のことを思い出しながら、53歳の私はしきりに後悔の念を浮かべ涙を流す。

それが切なかったのだけど、

 

これであなたは自由の身です。

 

という裁判官の一言で、ハッとする私。その時、止まっていた時間が動き出すのがわかった。

私は、罪の意識に際さまれながらも、悔恨すること自体が、彼と寄り添うことだった。彼がこの世からいなくなってからもずっと。

私は34年間、自分の時を止めて彼との過去の中に生きていたのだった。

 

じ・・・ゆう?じゆ・・う?

 

牢を出て新しい人生が開けた瞬間、私が作り上げてきた彼との世界が砂の城のように崩れ去っていく。

私の手の中に残った懐中時計は、タイムマシンだったのか?

光り輝く公園の中で、彼の幻影を見た後、崩れ去る彼という名の砂の城

振り返ったときに、何もない孤独の世界を見つめる私が寂しすぎた。

 

年齢を行き来するだけでなく、時間を止めたり動かしたりする成河くんを時間の魔術師と呼びたい。