This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

나쁜자석(悪い磁石)

f:id:ringhun:20190322211917j:image

「나쁜자석(悪い磁石)」観てきました。

3年前に1度観て、衝撃を受けた作品。

初めての韓国での演劇に、言葉もわからないのに、ただただ涙した記憶があります。

あの時は、まだ知っている俳優さんが何人かいたのに、今回は誰一人として知らない若い子たち。

少々不安を抱えつつも、やっぱり観たくて当日券でトライ。

ふふふ、舞台が開いた瞬間、あまりの若さに場違い感MAXになりましたが、

やっぱりこの作品好きだなぁ。

 

ストーリーの方はスタンドバイミーみたいな、男の子の友情のお話で、

日本でも「淋しい磁石」という題目で公開されたことがあるそう。

 

f:id:ringhun:20190322211950j:image

 

登場人物

ゴードン:カンチャン

心の傷を抱えて、やや内向的だが童話作家としては不遇の天才。

9歳の時に転校して来て、フレイザーたちと知り合い、19歳の時にフレイザーたちとバンドを組むが、

些細なボタンの掛け違いで自殺する。

 

フレイザー:ホンスンアン

グループのリーダー的存在。親は弁護士(あれ?医者だったかな?)で裕福な家庭の子。

しかしそれはそれなりに悩みもトラウマもあり・・・。

9歳の時にゴードンと知り合い、彼の物語に心を打たれ彼に興味を持つ。

しかし19歳の時に、彼が自殺したのは自分のせいだと自分を責めたまま

29歳になったそれを今も乗り越えられず堕落した生活を送る。

 

ポール:イカヒョン

フレイザーをずっと慕いついて来たのに、フレイザーは自分よりもゴードンを見てることが許せなかった。貧しい家の子で、成り上がる野望を抱いていて、だからこそフレイザーを慕ってたのか?というところもある。19歳の時、バンドの方向性でゴードンとぶつかり、フレイザーをけしかけて排除しようとして、そのせいでゴードンを自殺に追い込んだのに、そのあとバンドを辞めて出版社に勤めると、

ゴードンが残した童話を使ってひと儲けしようとする合理主義者。

だが、彼ももしかしたら彼なりに「作品を残す」ことによってゴードンを忘れないようにしたのかもしれない。

 

アラン:イムジュンヒョク

いつもみんなから下っ端扱いされながらも、いつも笑顔のアラン。

バカがつくほど素直でお人好しで、友達想い。

19歳のときに、ゴードンとの方向性の違いにどうしたらいいのか?と悩んでるフレイザーとポールの話を聞いて、「バンドから外す」と言うことをゴードンに告げた張本人。

そのせいでゴードンが自殺したことに、罪悪感をずっともちつづけながらもちゃんと社会に順応して

29歳の今、工場を経営して、19歳の時から憧れていた(?)ティナと結婚して幸せな家庭を築いている。

 

物語は彼らの9歳、19歳、29歳の3つの時間軸を行き来しながら展開していきます。

9のつく年は満ちる1つ前の数字で、一番魔に近い年齢なんだって。←トッケビで言ってたww

その不安定な歳に起こったさまざまなことが、起・承・転を経て未来に繋がっていく結になるところがすごいなぁと思う。

役者云々の前に、作品自体がもう好きすぎ。

 

前回自分なりに調べた時から、ゴードンの残した童話が好きすぎて、敷居の高い演劇に飛び込んだんですよね。結果、だいぶ撃沈したところもあったけど、

今回、ストーリーの詳しいあらすじを、つい友さんから教えてもらったことで結構ついていけたと思います。(詳しい資料くださってありがとうございます〜!!!)

観たあと、詳しいつい友さんともお話しして、やっぱり好きだー!となりましたね。

 

このお話は、合理主義者のポールが、ゴードンの残した童話を出版して、世界的に売り出すことに成功し、その印税を3人で山分けしようと声をかけたこと、

そして、アランがそれにかけて、9歳の時にみんなで埋めたタイムカプセルを掘り起こそうと持ちかけ、久しぶりに3人が揃うところから始まるんだけど、

フレイザーは、思いの外ヤサグレたダメ男で、9歳の時の純粋で子供らしいお山の大将だった姿と違いすぎて心が痛い。

落ちぶれた彼と立場が逆転したポールとアランとの関係性がまた切ないんだよね。

「なんでこうなっちゃったんだ?」

かつてはみんなを思いやり、引っ張っていたフレイザーが、今はみんなの手を払いのけて終始暴れていて、観ていて本当に痛い。

ポールはきちっとしたスーツに身を包み、今の立場に喜びを感じてる風で、フレイザーをやや見下した感じで、

アランは一番成功しているにもかかわらず、昔と変わらない天真爛漫さで、2人を迎える。

3人が思い出の桟橋で会うことで、心の奥底に沈めておいたそれぞれの思いが掘り起こされ、

そこに幻のように立つゴードン。

あの頃のまま変わることがないゴードンの面影と、時とともに変わってしまったものと、変わらないように頑張っているもの。そして、変わることも変わらないこともできないもの。

舞台に立つ誰に思い入れするかで、この作品の解釈も全く変わってくるんじゃないかな?と思うんだけど、私は、前回の時も今回もやっぱりアランだった。

 

小さい時から下っ端にしか扱われず、相手にされなかったにもかかわらず、

4人の友情を誰よりも大切に思っていたアラン。

彼がどんな境遇だったのかはよくわからなかったんだけど、

「愛されるためにはまず先に相手を愛する」彼の愛を求める孤独に胸が痛くなる。

彼が笑えば笑うほど、その笑顔が泣いているように思えて愛おしく、切なかった。

多分、他の3人が抱えていた全ての問題を、彼は一歩引いたところから理解していたと思われ、

全てを知っていた上で、なおも「友情」を繋ぎとめようとする姿はもう「固執」にも見える。

なぜに彼はいつも孤独なのか。

孤独だからこそ、愛に溢れ、ラストのカーテンコールで抱き合う3人を一番外側で抱きしめるアランに

その愛の大ききさを思いながら、抱きしめてあげたくなった。

 

f:id:ringhun:20190322212026p:image

 

この回アランを演じていたイムジュンヒョクくんは、お顔もとても優しくて可愛くて💕

オバさん、すっかり好きになっちゃったな。←

彼の笑顔には人懐っこさと、哀愁が漂っていて、あれは魅力的よね。

 

ゴードン役のカンチャンくん(言いにくいな)は、物静かだけど、感情の襞の細かい人って感じがした。元々必要以上のセリフがない役だし、感情的にもならないけれど、彼は立っているだけで、

何かを訴えている気がして、唯一感情を露わにした廃校でのヒューゴへの怒りに、彼の抱える悲しみとトラウマが心に突き刺さって、あれは、フレイザーでなくても抱きしめたくなる。

 

フレイザーのホンスンアンくんは、9歳が一番良かった。

19歳は案外あっさりしていて、29歳は荒みすぎて見ているのが辛かった。まあ、フレイザーはそう見えれば成功なのかもしれないけれど、悲劇の中に自分を閉じ込めて、ゴードンの悲しみも、他の友人の声も何も見えないまま終わってしまった気がして、辛かった。

まあ、元々私はフレイザーが好きではないのだよ笑

 

前回はポールが一番嫌いだったけど、今回のイカヒョンくんのポールは意外と好きだった。

合理主義者で、ゴードンの死に対して最も罪悪感を感じていないポールなんだけど、

もしかして、ポールはポールなりに彼の作品を世に出すことで、「僕を忘れないで」と言っていたゴードンの言葉を生かそうとしていたのかな?って思ったりした。

それだけのいい人感が彼のポールにはあって、嫌いになれなかったのでした。←それがいいのか悪いのかはわからないけどww

 

4人はそれぞれ、自分にはどうすることもできない悲しみを抱えていて、だからこそ引かれあっていたんだよなぁ。でも、その悲しみは誰もが持っているもののような気もする。だからこそ、彼らに共感を感じるし、引き込まれるんだよなぁ。

 

ラストも見る側に解釈を委ねていて、過ぎ去った愛おしい関係なのか、これから紡ぎ直す未来を見るのか、うーん、私は迷ってしまった。

でも、これが、ラストの花吹雪の後残った種ってことだよね。

種は芽を出すか、出さないか。私たちの心の中に。