This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

ラストぷらんけんレポ~コニョウンその愛②


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怪物の誕生は、最初に見た時よりもずっと短かった(苦笑)
あの「人間でないモノ」的な動きが好きだったんだけど、
これは演出上で変わったんだなと思える3ケムル共通の尺で、ちょっと残念。

でも、久々に見たウンケムルは、前よりも生気がありました。
若干獣寄りなのかな?
だけど、チケムルやウヒョケムルのそれとは違っている。
野生というより無垢。
頭に浮かんだのは、赤ん坊でした。

誕生したばかりのケムルの動きは、本能というにはあまりに幼いんですよ。

息が漏れたようなウンケムル独特の唸り声に、人間でない感は今まで通りで、
一見、人間離れした動きを見せたりするケムルですが、
無表情だった以前は「人間でないものが蠢く」イメージだったのに、
今回は「世界を初めて感じている生まれ落ちたばかりの魂」って感じなんです。

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ルンゲを噛み殺したけれど、それは防衛反応でそこに何の感情もない。

口をパクパクしたり、自らの手を舐めたりして、
その口に入ってきたもの(ルンゲの肉ですけど)がどんなものなのか、
口の周りがなぜベトベトするのか確認しているんですよね。

まるで赤ん坊が自分の手足をなめったり、
その辺のものを辺り構わず口に入れたりする様子によく似ているんですよね。
口の周りについてベタベタするものが何なのか、
口に入ったものがどんなものか確認するように、
くちゃくちゃといつまでも口の中にルンゲの肉をかんでている。
(チケムルはぺっと吐き出すんだよね。)

でも、その様子を目の当たりにしたビクターのショックは尋常ではなかったはず。
外見は、アンリなのに、得体の知れないような動きをするウンケムルは、
血だらけの姿で、ルンゲの肉を食べているように見える。
文字通り彼には「怪物」に見えたに違いない。

この瞬間、コニョビクには、アンリではなく実験の失敗作と認識される。

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実験の失敗は自分で処理しなくてはならない。

この時のコニョビクは、
アンリが戻ってこなかった悲しみやルンゲを殺された恨みよりも、
実験の失敗の悔しさや悲しみの方が強かったと思います。

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作る前のアンリへの強い想いはどこへ行ったんだぁ~~~!

出来損ないのおもちゃを壊すように、
書き損じた日記帳のページを破いて丸めるように、
首を絞め、銃を撃つ。
それを殺意とは言わない。

冷酷な、自分という殻に籠ったままのコニョビク。
彼の最後の「あんでー!」の叫びは、己に纏わりつく「呪い」への嘆きだった。
そしてそれはラストの叫びと繋がるんだなぁ・・・・。

ウンケムルが放った最後の叫びは、一体どんなものだったのか?
まだ感情も芽生えていない赤子の叫び。
込み上げるものが一体なんなのかもわからず、そのまま吐き出した叫び。
最初に芽生えた感情が怯えと恐れだなんて悲しすぎる。

自分の身の危険を本能で感じ、実験室を飛び出した彼の身体能力は、
ある意味実験の成功と言える。
死なない最強の兵士。皮肉なことだけど、
繋ぎ合わせた身体でなく、アンリの身体を使っていたとしたら、
ケムルは生きていけなかっただろう。

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そして3年後、全てを学習して、ケムルはビクターの元に戻ってくる。

どこまでも冷淡だったウンケムルなのに、今回の声のの優しいこと!
どことなく、ビクターと逢えたことへの嬉しさがにじみ出ています。
なのに、コニョビクは、戻ってきたウンケムルに眉を顰める。

それに少し拗ねるように
「久しぶりにあったのに、そんな言い方はないだろう?」と言い、
思わず「アンリ」と呼んでしまったコニョビクに、
コニョビクはそれの顔を見てつい出た名前だけ。

「アンリ・・・ふっははは。その名前は私の名前ではない。」と、嘲笑する。

「ぷろっけうるじまら!」の叫びを聞きたかった私としては、
残念この上なかったのですけど、嘲笑もいいな。
怖いイメージから、悲しさが前面に出た感じ?
全く笑わなかった前回とは打って変わって、
笑みを浮かべ、声を出して笑うウンケムルは、
誰も寄せ付けなかった冷酷な鬼神から、
ビクターだけを求める彼の「創造物」になっていました。

それなのにコニョビクはさ、
「自分の野望のために、自分の親友が犬死するのを傍観した。」と言われても、
「違うっ!」って否定するんだよね。
その後、言い訳するわけでもなく、返ってきた日誌に喜ぶ姿は、
明らかにケムルの存在を無視しているわけで、

「なぜ帰ってきた?何がしたいんだ?」の一言で、それを決定的になる。

その時のウンケムルの悲しさはどれほどだっただろう。
一瞬言葉を失い、涙を浮かべビクターを睨みつけ声を震わせるウンケムルは、
逢った瞬間、忘れてもいいと思っていた怒りをビクターにぶつけるけれど、
怒りを叫びながらも、怒りよりも悲しさの方が強く胸に突き刺さって、
本当に胸が痛い。

自分が人間でない象徴の首の傷を掻き毟り、
そして、その手を拳に変えて、涙を流しながら、「♬逃亡者」を歌うウンアン。

真っ暗な暗闇の中で私は震えていた 
今思えば 涙を流していたらしい 
訳も分からぬまま 私はまた走って 走って 
空腹を抱えて 
言葉にならなくても泣き叫んだよ 

その歌詞を、文字通り泣きながら歌うウンケムル。
ここを泣いて歌うの反則(涙)

胸がからこみ上げるものがなんなのか、
目から流れるものがなんなのか、
それすらもわからずただ震えていた彼の姿を思い浮かべると切なすぎる。
橋の上で切々と歌い上げるウンケムルの涙は、
悲しさよりも、「なぜ!?」というやり場のない怒りを強く感じました。

怒りを表現して悲しみを訴え、悲しみを訴え怒りを表現する。
ウンテさんの歌と演技の深さに、私はただただ涙するしかないのでした。

今回、すごく印象的だったのは、ウンケムルの表情。
初回、前回と無表情だったケムルは、今回、表情がよく変わり、
その時によってケムルの「成長」もよくわかるんですね。

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誕生の時は、赤ん坊で、
格闘場に連れて行かれた時は、幼児のようで。
すると、3年後に帰ってきたケムルは、さしずめ思春期越えた青年か?(笑)

特に、誕生から格闘場のウンケムルの表情は、
前回と全く解釈が違うかと思うほど変わってて驚きました。
これ、我が子の誕生がすごく影響してるのかなと思った。
いろんな経験をした大人が、こんな無垢な表情ができるのか?と思うほど、
リアルに赤ん坊で、幼児の表情なのよ。

でも、我が子の仕草を思い浮かべながらやってたとしたら、
相当辛い演技だったよね。
彼の感じる心の痛みがそのまま伝わってきて、同じ親として共感してしまう。



ジャックによって言葉と力で暴力を受け、自分を完全否定されたウンケムル。
身を縮こまらせ、優しい手を差し伸べるカトリーヌに、
「お前は俺が怖くないのか?俺は人間じゃない・・・んだぞ。」というセリフは、
前回までの脅すような凄みのある声ではなく、
虐待を恐れる子供のように体を震わせ、怯えるようなオドオドした声。
前回の「脅し」は、ドキドキしたけれど、
オドオドはきゅぅん。
でも、幼さの残るウンケムルにはこっちの方が合っていると思う。
そりゃもう、カトリーヌは彼を抱きしめるしかないって。

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ウンケムルとカトリーヌは母子だと言われているけれど、
今回は特にそれがよく出ていたと思う。
彼女の仕草や言葉を真似て何度も繰り返し、
甘えるように笑うウンケムルは、どのケムルよりも幼く、
あまりにも無防備にカトリーヌに心を預けていて、
手を取り合い歌う様は、幼児と母親が草原で童謡を歌っているようなのよ。
彼女が笑い、褒めてくれることに、最上の幸せを感じて笑うウンケムルには、
カトリーヌでなくても母性本能を鷲掴みされてしまうもの。

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そんなケムルだから、痛めつけられるシーンは、どのケムルよりも心が痛い。
でも、ウンテさんの細かい演技のなせる技でもある。
彼は殴られる時、それに合わせて身体を動かすのね。
だから、本当に殴られているような臨場感があるのです。

やられる演技。
それはきっと、ジーザスの鞭打ちシーンで得た技術なんだろうな。
熊にも負けない不死身のケムルが、ジャックごときの暴力であんなにボロボロにやられるのかと、
ツッコミ入れたくなるけど、思わず目をそらしてしまいたくなるほど、痛々しい。
焼印の時のリアルは、「痛い痛い!」と声を出してしまうほど。
でも、たまらなくそこが好き(笑)←SでもMでもありませんが。

これは暴力シーンだけでなく、誕生の時、ビクターが「起きろ!」と、身体を叩くときもそうなのよね。
わざと動きに合わせて体を反らして跳ねるから、ビクターが思いっきり叩いているように見えるのよ。
叩かれるままだと、胸の前で寸止めで拳を止めるから、
ビクターの演技にとても嘘臭さを感じてしまって残念だと思っていたんですよね。
だから今回のウンテさんの演技には「おーーーーー!」って、心の中で叫んでしまったの。



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「ケムル=アンリ」なのか、「アンリの記憶を持ったケムル」なのか。
ここは似ているようで、全く違うものなのよね。
どのケムルも(ビクターも)その回ごとに演技を変えてくるから、
その時の気分で解釈も変わってしまうものなのかと、戸惑いは隠し切れません。
(実際、ドンビクは、ラストの拳銃のシーンで、撃つ気はなかったのに、
事故で発砲してしまったという日があったと言っているし。)

チケムルは、
完全に「アンリの記憶を持ったけむる」だった日が多かったように思うけど、
アンリとケムルが交互に出てしまう、
「ジギハイ」的な回が、案外お気に入りだったりする。

ウヒョクケムルは、ケムルだったと思う。
そして、ウンケムルは、前回は完全にアンリだと思ったけれど、
今回は「ケムルになったアンリ」だと思った。
微妙に違うようで、ここ、かなり違います。

私にはかなり衝撃でした。


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♬絶望」で、「私は北極に行く。」のくだりから、完全にアンリだった。
「♬傷」もアンリ。
それが、少年に「おじさんが人間の作った「創造物」なの?」で、
一瞬、言葉に詰まって、少年を見つめた後、
「なぜわかった?」
「首の傷」
と、首の傷を指差され、現実の姿を突きつけられるんですよね。
その時に、どうにもならない悔しさと悲しさが込み上げ、ケムルに引き戻される。

「・・・そうさ、私には傷がある。」

その時のセリフの全てを諦めたような冷めた口調が切なすぎるんです。

アンリはアンリだけど、ケムルに生まれ変わったことで、
完全否定された仕打ちを心に刻まれたアンリ。

だから、今までの「人間に対する恨み」ではなく、
このウンアンは純粋にビクターを恨んでいるんです。

でも、よれよれになって、北極にやってきたビクターを見て、
嬉しそうに笑うのよ。
嬉しそうに、自分に向かってくるのを見つめてる。
その瞳がすんごく優しくて、だから余計に悲しい。

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ビクターを後ろから羽交い締めにするところは、完全にビクターを抱きしめていて。
前回見た時は首を絞めていたから、
「抱きしめてる」って、後から見た人がみんな言っているのを
どうしても信じられなかったんだけど、
実際見て「ああ、これかぁ~~~~!」って、ようやく納得。

 ここに来た目的も、恨みも全て忘れて、ただ愛おしくて抱きしめるアンケムルは、なんとなく幸せそう。

なのに、コニョビクは刺すんですよね、彼を。
コニョビクは復讐に囚われて、彼を殺すためだけに北極まで来たわけだし。
コニョビクに刺された痛みが、再びウンケムルを現実に引き戻す。

自ら、ビクターの拳銃を受けたウンケムルの絞り出すようなセリフ。

「きみはもう一人だ。一人になるという悲しみ・・・」

で、たまらず泣くんですよ。
ここ、どんだけウンアンが辛かったかを物語っていて、

「・・・もう分かっただろう ?
・・・私の友達、ビクター、・・・これが僕の復讐だ。 」
 
ここで初めてアンリとしての嘆きをビクターに訴えるんです。
「自分はきみの友達、アンリだよ。」と。
そしてにっこり笑う。
ああ、もうなんだようぅ!その笑顔は!
復讐を遂げて嬉しいって笑顔じゃないよ。

ビクターの裏切りを許せなかったこと、
それでも彼を愛していること。
そして彼の愛が欲しかったこと。
だから、復讐したのだと。
最期に残った感情は、ただただ、「愛おしい」だったんだね。

なのに、コニョビクは「あにゃーーーーー」って否定するんだよなぁ~。
それはあまりに酷すぎる(涙)

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本当はケムルがアンリだとわかったはずなのに、
自分の過ちも、彼にした仕打ちも認めることができずに、
「違う」と言い張るコニョビクは、
本当に意地張りで、素直じゃないんだ。
でも、一人残され息絶えたウンケムルを抱きしめる彼は、
ちゃんと全てを受け止めてたと思います。

息絶えてしまったけど、
彼の胸に抱かれるウンケムルの凌駕された死に顔がただただ、切なかったです。

いくらアンリの記憶が戻ったって、なんでそこまでビクターを思うんだろう?
それが最後まで心に引っかかっていたけれど、
帰国して、うちに帰ってきた時、
うちのワンコが尻尾を振って駆け寄ってきたんだよね。
その目を見たら、ケムルと重なって泣きそうになった。

ケムルにとって、ビクターは創造主だっていうことが全てなんだよ。
ひとりぼっちにされて、疎まれて、ぞんざいに扱われて怒りを覚えても、
顔を見たら擦り寄りたくなる。
理由なんてないんです。そういう存在なんだって思った。
ケムル・・・なんて健気なやつなんだよ。本当に。

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愛しているよ。