This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

「フランケンシュタイン」レポ〜2匹の怪物②

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あんにょんです。

間が空きましたがレポの続き、行きます!
2匹の怪物と言いながら、ビクターのことも少し入っています(苦笑)


下女のカトリーヌを助けたことで、一緒に格闘場に捕まった怪物。
そもそも、感情も知能も目覚めていない怪物が、「なぜカトリーヌ助けたのか?」
という疑問はなきにしもあらずですが、
とにかく、わけのわからないまま連れて来られ、
わけのわからないまま戦わされた怪物。

圧倒的な強さを見せつける怪物に人々は興奮するけれど、
「野生の獣」は、攻撃するものは倒すが、必要のない殺生はしない。
絶対的な強さを見せながら、最後のとどめをささない怪物に、
ジャックたちがイラつくのを見ていると、
結局、何よりも残酷で野蛮なのは人間ってことなのだと思う。




お前は怪物だ

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なんだか小ワザがいっぱいだったコニョンジャック。
でも今回は、ふと気が緩むとかっこよさが見え隠れしちゃちゃって、
ジャックじゃなくなっちゃうことろが残念でした。

滑稽でコメディ要素の多いジャックだけど、歌ってることはメチャクチャエゲツない。
狡猾で卑怯で、人の心を踏みにじることが楽しくて仕方がないジュンサンジャック。
卑怯で卑劣だが、あんまり頭はよくなさそうなコニョンジャック。
私の見た回の彼は、今ひとつ吹っ切れてない違和感を感じてしまったけど、
粘っこいいやらしさはピカイチで、次回のお楽しみでもあります。
多分、ビクターもジャックも、コニョンさんが一番王道なんだと思うのね。(設定的に一番合う)


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最初は三つ編みだったのに、今は下ろしちゃったのね。
私が観たとき、杖に引っかかっちゃって大変だったからやめたのかな?

年下という致命的な欠点を、恐妻エバのペット的な年下夫に身を崩し、
無邪気でエゲツない残酷さを全面に出したドンビクター。
おかまちゃんちっくな仕草で、おもちゃを弄ぶように怪物を痛めつける様子は、
子供の残酷さに似たものを感じました。

まさに三者三様のジャックですが、今回は本当に難しい役なんだと言うことが、
すごくよくわかりました。
だって、かなり突き抜けた演技をしないと、観ている方が小っ恥ずかしくなって、
背中がムズムズしちゃうんだもん。

コニョンさんもドンソク王子も、かっこよすぎて、かっこよさがなかなか隠れきれない(苦笑)

この役を楽しんで演じることができるジュンサンさんはすごいということなのかな?

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って言うか、ジュンサンさんのイメージの許容範囲なんだよね。ジャックって(笑)
ぴったりだって思っちゃうのは私だけ?(失礼)

・・・いや、ジュンサンさんの見栄えが良くないと言うわけではないんですけど。

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ビクターに痛めつけられる怪物が痛々しい。
この時のウンテ怪物は、特に痛々しい。
効果的な痛めつけられ方を知っているということなのかな?(笑)
JCS」のジーザスでの鞭打ちの演技がここで生きているというか(笑)

もちろん、チサン怪物も痛々しいです。
でも残念ながら、あまり覚えていなくて(苦笑)
多分ほんの少しの動きの違いなんだろうけど、ウンテさんのその動きが印象深くて、
思わず声が出ちゃうほど胸が痛くなります。



あそこには

心も身体も痛めつけられうずくまる怪物に、手を差し伸べるカトリーヌ。
その手に怯え、身を硬くする怪物は、
熊を一撃で倒した怪物と同じとは思えないほど弱々しく、
「大丈夫だから、大丈夫、大丈夫。」とその背中を撫でるカトリーヌの仕草に、
思わず自分とカトリーヌを重ねてキュンキュンしてしまうのです。
(うーっ、なでなでしたい!)

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チサン怪物は、ここは本当に犬っころのようで、
犬のように唸ったり、キューンと甘えた声を出したり。
いや、もうかわいったら!
犬のようにじゃれて、無防備にカトリーヌに心を許し、スキスキモード全開で。
ワンコ好きにはたまらない可愛さで、抱きしめてあげたくなります。


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ウンテ怪物も、カトリーヌと無邪気にじゃれ合うところは本当に可愛い。
純真であどけない子供という感じ?
彼女とやり取りをすることで、突然言葉がわかるようになり、
頭の中にいろんなものが流れ込んでくる。
ここで、アンリの記憶も少しずつ入り始めるのかな?
そんな感じが、彼の仕草や表情でよくわかるんです。

「アンニョン。」
を、小さな子どものように覚えたかと思うと、
カトリーヌに迫り、いきなり別人のように
「俺は人間じゃない。怖くないのか?」と言ったりする。

大人と子供を行ったり来たりする頭の中に戸惑いながらも、
そんな自分を受け入れてくれるカトリーヌの笑顔に、
アンリの時にも感じなかったぬくもりを感じ、幸せに笑うんだなぁ。

北極に憧れるカトリーヌを真似るように、彼女の言葉を繰り返すように歌い、
素敵な物語を聞いた子供が夢見るように瞳をキラキラさせて空を見上げる姿は、
あまりに愛おしくて抱きしめたくなります。



私は怪物

この歌と、「♬あそこには」は対歌ではないかな。

「♬あそこには」で、全面的に心を許したカトリーヌにまで裏切られ、
壊れたおもちゃのように無残に捨てられ床に転がる怪物。

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まるで母親に捨てられた子供のようなチサン怪物の歌は、
寂しい、寂しいと泣いている彼の心が切なくて、グッとこない人はいないだろう。
孤独の悲しみは怒りに変わり、それを爆発させて歌った後、
いきなりクゥーンクゥーンって、泣くんですよね。
そして獣のように吠える。
(怒りに任せて起き上がり、折れた手や足をバキバキ直すチサン怪物が、
勢い余って、反対の腕と足を直してしまったのは内緒www

初演と変えて、あくまでも獣として悲しみを表現しようとしたのかな?
最初は驚いたけれど、最初は甘えるような声で、そして悲しい声に変わる。
それは「寂しい!寂しい!」と心に響いてきて、胸が詰まってしまいます。

昨晩初めて夢を見た・・・
誰かが私をしっかり抱いてくれる夢
温かい胸に顔を埋めて笑った・・・
私はその夢の中に生きることはできなかったのか


寂しさと悲しさを訴えるチサン怪物。
回想から現実に戻った時、怒りに笑い、復讐に酔う鬼と化す。


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ウンテ怪物は糸の切れた人形のように、ただ、無気力に床に転がる。
つぶやくように歌う声は、力がなく、痛々しい。
そしてよろよろと立ち上がろうとするけれど、折れた手や足を出して、
身体を支えらえず、ぐにゃりと転がってしまう。
なぜそうなるのかわからずそれを繰り返し、やがてイラついたように
投げやりに腕や足、首をバキバキ直すあたり、すでに生き物ではないんだけど、
その不気味さすら、悲しくて痛々しい。

湧き上がる怒りに、一瞬我を忘れるけれど、
歌間の長い間で、糸が切れたように立ち尽くす。

今もそうなんだろうか?

チサン怪物が泣き叫んだこの場面、ウンテ怪物は全く泣かない。
初演の時は泣きすぎて歌が出なくなったほどだったので、それにはかなり驚いたけれど、
一人きりの舞台は怖いほど静かで。
燃え盛る炎の中、見回しても誰もいない孤独に呆然と佇み、
そこでただ、思い出したようにカトリーヌに教えてもらった
「あんにょん。」の手を振る動作を何度も繰り返す。

それは、心と身体が覚えている幸せな記憶。
繰り返し真似て、虚しさに絶望するその姿は、
号泣するよりも悲しくて切ない。
一度味わった温もりは、喪うことでその心の傷をより深くする。
心の傷が深すぎると、泣くこともできないんだ。
カトリーヌのこと、本当に好きだったんだね。

だから、その後の

昨晩初めて夢を見た・・・
誰かが私をしっかり抱いてくれる夢
温かい胸に顔を埋めて笑った・・・
私はその夢の中に生きることはできなかったのか

は、本当に悲しくて、泣けない怪物の代わりに私が号泣する羽目になる(涙)




絶望

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復讐鬼と化したチサン怪物は、破壊された機械の前で絶叫するビクターの声に
悦びの表情で彼を見下ろし、
全ての原因が自分にあると知っていながら、
反省も後悔もなく同じようにエレンを生き返らせようとしたビクターに、
激しい怒りと復讐の感情をぶつける。


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ウンテ怪物は、心を閉ざしたように冷ややかにビクターを見下ろす。
彼の怒りは、ビクターというより「人間」への怒りのように思えます。
ビクターを通して人間の傲慢さに怒り、
復讐というより、粛清に近いような感情じゃないんだろうか?
これってもしかして・・・。




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ああ、この歌はこれほど深い歌だったのかと、
今更ながらに唸ってしまった。
初回の時は全くわかっていなかったんです。

初回は生命創造機を破壊して、
エレンを生き返らせようとするビクターと対峙した後歌われたんですよね。
で、その後ジュリアが殺されるので、歌のメッセージがぼやけちゃっていた気がします。
それが、北極へ向かうところで歌われることによって、
この歌のメッセージがより強く鮮明になったんですよね。
それは、この舞台の主人公が、ビクターから怪物=アンリに変わった瞬間でもありました。
そして、チサン怪物とウンテ怪物の話が決定的に違うものになる瞬間でもあります。


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初演のですけど、画像が見つからなくて。
あったと思ったんだけどな。


チサン怪物の傷は、ドラマチックに悲しみと虚しさを訴えます。

彼も復讐の虚しさはわかっているんですね。
それでも復讐せずにはいられない。彼にはそれしか残っていないから。

少年を湖に突き落とした呟く「そうなるな。」の口調には怒りを含んでいて、
殺意を持って少年を突き落としたような気がします。

それは「ビクターの過去」を知っているからこその怒りで、殺意。
彼の中にアンリの記憶は思い出しているんですね。
でも、チサン怪物の中にアンリの記憶の破片はあっても、怪物は怪物という別個人なんです。
アンリの記憶の中の「ビクターへの愛」が深ければ深いほど、恨みも深くなる。

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自分の身に起こったすべての悲しみに対する怒りを、
己の恨みを己の身をもってビクターに復讐する残酷で悲しい復讐。

怪物アンリ。

だから、アンリの記憶は怪物を悲しみに突き落とすものであり、
チサン怪物は、アンリへの憎しみも一緒にビクターへ叩きつけるんです。

孤独な悲しい怪物の復讐の物語。
切なくて、悲しくて、胸が苦しい。

「これが俺の復讐だ」と言い残し息を引き取った怪物の魂は、
復讐を叶え、安らかになれたのだろうか?

ともかく、ビクターから解放されて1人空に上ったんだろうなぁ。
そんな気がしました。

遠い空に、彼の幸せがありますように。


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ウンテ怪物の「傷」は優しい。
少年に絵本でもを読むように、優しく、夜空に溶け込むように語りかける柔らかな声。
でも、どこか諦めたような寂しさを感じます。


   
얘야.. 우니
少年よ、 なぜ泣いてる?

길을 잃었어요
道に迷ったの

나도 길을 잃었는데
私も道に迷ったんだ

엄마 엄마
ママ ママ

울지마 
泣くな

얘기 하나 해줄까
私が話を1つ聞かせてやろうか?

어떤 얘기요?
どんな話

친구 별이 되고 싶어했어
私の友人の・・・あの星になりたかった・・・

얘기 해줄까
話を聞くかい?

はい

이리와 같이 앉자
おいで。一緒にすわろう


「내 친구(私の友)
 ビクターをそう呼んだのは、どういう意味だったのだろう。
チサン怪物の時にはスルーしてしまったそのセリフが、
ウンテ怪物の時には、妙に引っかかって。
だって彼のその言葉には愛が溢れているんだもの。



인간이 있었네
ひとりの人間がいたんだ

그저 나약한 남자
そう、ちっぽけなひとりの男

하늘을 동경해
あの空に憧れ

스스로 신이 되려했지
自ら神になろうとしたんだ

자신을 닮은 생명을 만들었어
自身に似た生命を作った

하지만 깨달았어
だけどダメだった

준비가 안된거야
準備してなかった


어떻게 성장하고
どのように成長して

어떻게 사랑하고
どのように愛して

어떻게 행복할까
どのように幸せを感じて


어떻게 죽을건가
どのように死んでいくのか


신이 되고 싶었지만
神になりたかったけれど

무책임한 육신일
無責任な欲張りだっただけ

인간은
人間はなぜ

세상이 자기꺼라 믿는 걸까
この世が自分のモノだと信じるのか


この歌は1幕の「♬ただ一つの未来」と対の歌だと思いました。

생명 그건 신의 자연 섭리
生命、それは神の自然摂理

함부로 다가설 없는 세계
むやみに近寄ることができない世界

오직 신만이 정하는 질서에 기대어 보존되는 생태계
ただ神だけが決める秩序によって保存される生態系

그것이 생명 불변의 법칙
それが生命不変の法則


最初にアンリが、生命創造を唱えるビクターに警告した言葉。
彼は最初から、「越えてはならない領域」だとわかっていたんですよね。

それなのに、ビクターに賛同して生命創造に加担してしまった。
その結果、怪物となり、その酬いを一新に受けたアンリ。

彼の歌う「傷」の優しく悲しい口調は、
ビクターを責めているのではく、
自分を含めこの実験は過ちであったと、悔いているように思えました。


아저씨가 인간이 만든 생명이에요?
おじさんが人間が作った生命なの?

어떻게 알았어?
どうして分かった?

목에 상처..
首の傷


그래 나한테는 상처가 있어
そう、私には傷がある

너도 커서 어른이 되면
おまえも大きくなって、大人になったら

인간 행세를 하겠지
人間のフリをするだろう

그러지마
そうなるな


少年を少年時代のビクターと重ね、
止められなかった自分を悔いるように湖に突き落とす。



괴물이 있었네
一匹の怪物がいたんだ

그저 상처 속에 살던
そう 傷の中に住んでいた

세상 그곳에
あの世界の果て... そこに

행복 그런게 있을까
幸せ... そんなものがあるのだろうか...


「私は怪物」でも泣かなかったウンテ怪物が、
ここでは涙を流して歌うんですね。
そこに、怪物としての最後の覚悟がひしひしと伝わりました。

越えてはいけない領域に入り込み、過ちを犯した科学者と医学者のとるべき責任。

振り返ったその「顔」は、アンリだったんですよね。
(いや、もともとアンリの頭なんですけどww)
そのとき、ウンテさんにとって、怪物=アンリなのだと思いました。

多分最初からではないと思うのね。
いろんなことを体験しながら、ゆっくりと断続的にアンリの記憶もよみがえり、
怪物とアンリが融合したと言うか・・・。

その過程も細かい所で、演じているウンテさんの演技には本当に驚かされます。
舞台以外の物語まで見えてくるよう・・・。


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ひとり北極でビクターを待つ。
北極にやってきたビクターを見つめる瞳は、もうすべてを決意した揺るぎない瞳。

ビクターが北極から出られないようにし、そして自分を殺させて、
「生命創造」という過ちを後世に残さないように、
ビクターの手で消滅させる。

「これが私の復讐だ。」
その最期の言葉は、やっぱり優しさがあって。

魂はきっと、彼のそばに寄り添い、
彼が天に召されるのを待っているんだろうなぁ。と思ったりしたのでした。

ひとり残され、怖れ戦き吹雪の中絶叫するビクター。

「アンリ・・・!!」

ウンテ怪物の亡骸を抱きしめて、ジュンサンビクターだけがそう叫びました。

その心を受け止めたジュンサンビクターの一言に、私は救われたのよね。

だから。

ラストに、アンリとビクターの絆を見せて終わった
ウンテさんとジュンサンさんの回が、一番好きだと思いました。




でも、舞台は生き物。
日々深化して、解釈もそれそれ変わるだろう。
次に観た時、私はどんな風に感じるのかな?