「フランケンシュタイン」ケミの秘密〜1
「フランケンシュタイン」を見ていると、
つくづく舞台というのは演じているすべての役者とのケミだなぁ、と思う。
ビクターとアンリ、怪物はもちろん、
エレン、ジュリア、ルンゲ、シュテファン、からちびビクターとジュリアに至るまで、キャストごとに本当に違っていて、そこから生まれるケミの数は、
一体どれほどなのだろう?
そしれそれぞれのコンディションによっても違うとなると、
1回として同じ舞台はないのだと、まさに舞台は生ものだと実感してしまう。
そんなわけで、脇も決して軽んじられないわけです。
この間の公演のジュンサンビクターとウヒョクアンリの回の
ちびビクターとちびジュリアン。
私のベストちびビクターとジュリアはこのペアなんだな。
他の子達より少しお兄ちゃんとお姉ちゃんのこの2人は、本当に演技がうまい。
ビクターとジュリアの心情が手に取るようにわかって、回想部分もドキドキします。
孤独な少年の話で、母親の火葬で父とやりあって退場する時の転びがうまい(笑)
そして彼だけ思わず手を差し伸べるアンリの顔を見るんだよね。そこがツボ。
それから傷の時、
ケムルの首の傷を見て「あっ」とする表情をするのね。
それは他のちびビクターもするんですが、
彼の表情は微妙な感情の機微があるのね。
「♬人間はなぜ、この世が自分のものだと信じているのか」のフレーズで
彼がなぜそんなことを言うのかと少しケムルを覗き込み、
首の傷に気がついて、納得するのよ。
そして「おじさんが人間の作った創造物なの?」と。
そこに恐れとかはなく、純粋な疑問を問いかけ、
真っすぐな瞳でケムルを見るんです。
少年に気がつかれたときのケムルの動揺。
思わず目を背けたくなるような純粋な瞳。
そこに出会ったときのビクターの瞳を感じるんだろうなぁ。
その瞳の輝きに惹かれながらも、
やがて大人になれが、自分を裏切るだろうという悲しみが押し寄せる
ケムルのその心の動きが、彼のその些細な演技で際立ってくると思うのです。
ウヒョクケムルの
「どうしてわかった?」が切なかったぁ。
ジュリアはですね、
ビクターから本を奪って、「ふふん」とするところとか、
本を読んで聞かせるビクターの横で、一緒に本を覗くけど、
彼が何を言っているのかわからなくてビクターと本を見比べたりして、
他のちびジュリアより一手間加えた細かい演技をするんです。
愛情をいっぱい注がれた幸せな娘。
そして太陽のような愛情をビクターに注いでいるのがよくわかる。
「大好きビクター。」
そんな声すら聞こえてくるようで、
だから孤独なちびビクターもジュリアに惹かれるっていうのもよくわかる。
そしてなにより「その日私が」で、ビクターと別れるシーンで、
エレンとビクターのやり取りを後ろで見ながら泣くんだよね。
それがとても自然で、視界の端に入ってしまうと私も泣けてしまうのです。
見ていない人は全然見ていないだろうけれど、
スポットライトが少しくらいその場所で、
しっかりちびジュリアを生きてる彼女が好きだなぁと思ってしまうのです。