This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

「いま、ここにある武器」~風姿花伝プロデュース


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あんにょんです。
残暑厳しい毎日ですが、先週夏休みをいただきまして、
成河くんが勧める(笑)こちらを観てきました。

「いま、ここにある武器」

目白にあるシアター風姿花伝
バスを使うか、歩くかの道のりしかないところにあるんですよね。

この日は35℃。
着く前に熱中症になるのも怖いので、バスを使うルートを選択したのですけど、
それが間違い(涙)

中野駅周辺は只今工事中で、バス停が大幅に変わっていて、
バス停を探してウロウロ。
ようやく中野サンプラザ脇に発見。
汗を拭き吹き目的地へ向かいます。
バスを降りたら徒歩1分の場所にあるはずなのに、劇場探してまたウロウロ。

そんなわけで1時間前に着く予定が15分前の到着。
大汗掻いて「遅くなってすみません。」と、チケットカウンターに行くと、
優しく対応してくださって、ああ、癒されました。


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劇場は180席がコの字に配置され、その真ん中に凸型のステージ。
椅子がポツンと置かれただけで、
始まる前からなんだか緊張感のある空気にドキドキ。

暗転とともに、千葉さん扮する普通のエンジニアと
しゅうさん演じるその兄が登場して舞台が始まる。

なにもない小さな空間で、ただただたわいのない会話。
変わりない日常。リアルな会話にリアルな話題。
それなのに、最初に千葉さんとしゅうさんが、お互いの名前を呼ぶんだけど、
その名前がめっちゃ合わなくて吹き出しそうになった。

そうそう、舞台はロンドン郊外のマンションなんだよね。
だけど、どこか新宿区の裏通りのマンションの1室で、
田舎から出てきたにいちゃんと弟が話ているのかと思うような
ユルいシチュエーションにうっかり油断していると、
ふと、背筋がすっと寒くなって、
「あっ」と気がついた時には
どうにもならないジレンマの中で身動きできない精神状態になってた。

一生懸命前を向いて走っているときに、突然横から声をかけられると、
不意なことに虚をつかれるというか、自分が信じていたことがぐらりと揺れる。
そこから自分への疑問が広がって、自信が不安に変わっていく。

「あれ?これもしかしてとんでもないことに足を突っ込んでいる?」

でも、そう思ったときには大概遅いんだよね。

1人のエンジニアが作った「モノ」は、偶然にも企業の目に止まり、
国家や他国の思惑にも飲み込まれる。

戦争を最小限の流血で終わらせるための「アイデア」は、
戦争を作る「兵器」となるかもしれない。
全てのことは諸刃の剣なのだ。

「自分の作ったモノが、世界を終わらせるかもしれない。」

気が付いた時の恐ろしさ。

「そんなのは私たちの責任ではない。」

そう言い切る企業のコンサルタント役の那須さんの声にざわざわするけれど、
企業や家族を背負う彼女にとっては、ビジネスに徹するのが「正義」だ。

良心的な兄の普通な人の考えと、
ビジネスライクな企業の考えの悲しいほどの平行線。
その間で揺れて、追い詰められる主人公。

善意や罪悪感は、それのない人との対話の中では心を惑わすことしかできず、
理詰めの説得にやりこめられ、ただ「嫌だ」「ダメだ」と言うしかない主人公は
子供が駄々をこねてるようにしか見えない。

良心を持つことは、弱さなのか?

そして彼を従わせるべく現れた、すべての人の心理を操れるような
斎藤さんの役の前には手も足も出ない。
斎藤さんのにこやかで冷たい笑みが、ぞっとするほど強くて、
私は舞台を見ながら心の中で「怖い!怖い!」を連発していました。

よかれと思ったことは、人を不幸にするかもしれない。
だけど走ることをやめることはできず、抗ってもそこから抜け出せないなら、
悩むことは無駄なことだ。
振り返り、周りを見ることが、自分の信念を揺るがすことなら、
前だけ見て余計なことを見ない方がいい。

先を見つめることは迷いを生む素なのか?
迷いとは逃げなのか?

馬車馬は、周りを見ると走れなくなるから、目隠しをするんだって。
馬車馬の気持ちを痛感する私。

すべてが終わった後の千葉さんの最後のセリフに、
救いと希望、そして絶望を感じた。
他の観客の方がどう感じたのかすこく興味があるな。
千葉さんとしゅうさんのインタビューには答えはないって書いてあったけど、

「いま、ここにある武器」とは何か。
それを恐れて動けなくなるよりも、
「いま、ここにある幸せ」を探したい。
それが誰かにとっての「いま、ここにある武器」になるかもしれなくても。

舞台が終わっても頭の中をぐるぐる回るセリフ。
心のざわざわが止まらなくて、
なかなか抜け出せないほどどっぷり引き込まれた会話劇の真髄。
するりと入り込むリアルなセリフを巧みに使い、人の心をぐっと引き込む。
「歌」の持つ力と違った「言葉」の強い力を感じました。

ここが、成河くんの恋しい空間なんだね。

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劇場をでて、入り口に成河くんのお花を見つけたら、
フッと気が緩んで涙出ちゃったよ。
私、ずいぶん、舞台で緊張してたんだなぁ。