「ドリアングレイ」ようやく見れました。
最後の最後にやっと観に行けた「ドリアングレイ」。
ああ、城南アートセンター本当に遠いよぅ。
3日通って、ようやく自分の中にストンと入りました。
深い。
深いよ、本当に。
ジュンスの華麗なダンスや、煌びやかな舞台に目を奪われて、
彼の悲劇的な物語で終わるには惜しすぎる。←いや、そうなんだけど。
初演で、挑戦的な斬新な演出で、荒削りで、
突っ込みたいところもたくさんあるけど、よかったです。
基本、1幕は原作に忠実に。
2幕は原作では書けていなかったメッセージを色濃く注いでいて、
原作で納得できなかった部分を解消された気分。
初演の「フランケンシュタイン」を見たときに感じたことと、似たものを感じました。
だから、もし再演してくれたら、再演の「フランケンシュタイン」のように
もっと整理されていい舞台になるだろうなぁ。
と思うんですよね。
ドリアンはジュンス以外にできる人いるんだろうか?と言う問題があるけど(苦笑)
できれば他の人でもみたいので、その辺何とか変えてもらえるといいなぁ・・・。
それじゃ、ドリアングレイが求める物じゃなくなっちゃうかな。
耽美主義。
美しい物を求めるためには、道徳心も利益も生産も排除し
人間の快楽の中に「芸術」を求めた。
今の社会では理解できない「堕落」というしかない思想だけど、
資本主義に押されて滅んでいこうとする貴族社会の貴族が、
現実から逃避するための思想と考えると、物悲しくも理解できるなと思ったりして。
そんな物悲しい美しさが、舞台にはとても良く現れていたんですよね。
これはジュンスの持つイメージの成せる技のような気がします。
ジュンスデビューだった私。
噂には聞いていたけれど、本当にダンスも演技も素晴らしかった。
舞台のセンターに引かれた光の道を踊る彼は本当に美しく、
飛び交う光の真ん中での、暴走とも取れるドリアンの躍動は心躍りました。
2幕以降の狂気に走るドリアンは彼の真骨頂なんだよね。きっと。
それはそれで凄かったけれど、
私的に感動したのは、1幕の純粋無垢なドリアンでした。
キラキラとガラス玉のように光る瞳は潤み、
つややかな肌からうっすらと香る汗が、
瑞々しい若さをたたえていて、本当に汚れのない少年そのもので、
演技でそんな所まで代えることができるのかと驚きました。
そんな美しい少年が、好奇心と尊敬のまなざしで自分を見つめたらどうする?
バジルでなくても、ヘンリーでなくてもときめいてしまうよ。
しかも、まだ何も知らないまっさらなキャンバスのような彼。
それを大切にしまっておきたいと思うバジルと、
色を落としてみたいと思うヘンリーの気持ちのどちらもよくわかるけど、
でも、どっちかと言われれば、やっぱり色を落としてみたいかな。
無垢な存在に自分の色を載せたときは、相当な快感だと思う。
ヘンリーは原作を見たときから虜になったキャラで、
本当に本当に魅力的な悪い男なんです。
ただ、物語の後半、ヘンリーの存在がとても薄くなっていたのが
とても残念だったんですが、
舞台でのヘンリーは、原作で描ききれていなかった後半がとても素晴らしかった。
1幕では原作に忠実に、2幕では舞台のメッセージを含む。
物語に感じたことと一緒。そうです。真の主人公はヘンリーなんですよ(笑)
ウンテさんの初の悪役。
もっともウンテさんは、「ヘンリーは悪役ではない。自分の信念に真っ直ぐな男」
だと言っていました。
うん、そうだよね。
舞台のヘンリーはまさにそんな感じでした。
まあ、「煌めく美しさ」なんかでは、ちょっと悪魔的な所感じましたけど(笑)
強さと弱さ。自信の裏に隠された迷い。そんな相反する心を隠しながら、
それでも自分を奮い立たせて自分の信じる道を突き進もうとするヘンリーは、
ウンテさんが今まで演じたどの役よりも男臭くて、太いライン。
それは新しい発見でした。
ラインが細く、繊細で優しいウンテさんが、こんなに男臭いなんて!
そして、とてもせくしぃ(笑)
それだけでメロメロっす。
全く歌わないシーンなんですけど、「漂う悪臭」という歌で、
麻薬にまみれたサロンパーティで、女の人とよろしくやったり、麻薬を吸う彼は、
とてもエロくてせくしぃ。どっきゅんでした。
お約束の胸元バーンも、大胆にエロせくしぃ。
こほん。
バジル役のジェウンさんも、実はお初なんですが、噂通りのいい声。
そしてなんて切ない笑顔をするんだろう。
誠実で不器用で、でも理想主義者のバジル。
原作はもっと暗くて内気で少し曖昧なキャラだったんだけど、
ジェウンさんのバジルはとても純朴でいい人で、本当にドリアンを愛していた。
まさかバジルをゲイにするとは思わなくて、すごく驚いたけれど、
原作ではよくわからなかった彼の心情がストンと落ちました。
劇場で、ヘンリー←ドリアン←バジルの一方通行な心が切ないんだけど、
実のところ、ヘンリーはバジルを本当に大切に思っていたんだよなぁ。
全てが両極なのに、親友だったヘンリーとバジル。
そこに物語の本質を感じて、
この2人がウンテさんとジェウンさんで本当に良かったと思いました。
そしてこの3人のケミが素晴らしい!!!
1幕ラストの「against nature」、2幕の「Life of Joy」は圧巻。鳥肌立ちます。
お互いが自分の信念をぶつける曲。
もちろん中心はドリアンだけど、バジルの嘆きに近い悲痛な心、
ドリアンを手中に収めたヘンリーの危険な光を放つ歌が、
ドリアンの危うい躍動を際立てるんです。ゾクゾクします。
歌っている俳優さんたちが素晴らしいのはもちろんだけど、
音楽監督のキム・ムンジョンさんの紡ぐナンバーに心を奪われました。
本当にどの曲もすごく好き。ドキドキしました。
OST発売されて本当に良かった。
ただ、舞台全体としては、演出が新しいことに挑戦したからなのか、
落ち着かなかったのは事実。
これを見た後「キンキーブーツ」を見たとき、なんだかホッとしちゃったんですよね。
あれはなんだとのかとずっと思っていたんですが、
この作品、無駄がなさすぎるんです。
原作を舞台化するとき、尺を考えていろんなものを切らなければいけないけれど、
あまりにバッサリ切りすぎて、シーンとシーンを繋ぐ部分が全くないんですよ。
無駄がないといえばよく聞こえるけれど、多少の無駄は必要悪なんだよね。
例えば、
バジルが肖像画を贈る時、自分の想いを1人で朗々と歌い上げるけど、
ドリアンに手渡すシーンはない。
ドリアンに捨てられたシビルは、自分の悲しみを謳うけれど自殺する場面がない。
ヘンリーとドリアンとバジル。
3人の立ち位置で、そのときの関係が見えるけれど、
立っているだけで動きが少ないんですよね。
歌が重視で、演技の部分が削ぎ落とされてしまった感があるんですよね。
なんだか何もせずに立っている状態が多くて、
立っている俳優さんも、演技のしようがない状態になっているのが気になりました。
常に舞台の中心しか光が当たらない。って言うか、中心しかない。
それがこの舞台を薄っぺらく見せてしまっているんじゃないのかな?
それが新しい試みだと言われれば何も言えないんだけど、
最初見たときは、コンサートかと思ったほどで。
そのシーンの主人公が声高に歌い上げて、それはそれで素晴らしいのだけど、
シーンごとがぶつ切りな感じがして、
せっかくキャラが熱演しても物語が伝わりづらい。
そして、ジュンスは華麗に踊るけど、
ヘンリーとバジルはほとんど動かないのがとても気になったのね。
2人とも深い演技をする役者さんだから、
もっともっとアンサンブルとの絡みや動きが欲しかったように思う。
ヘンリーは絡みはあったけど、そのときは歌わないし(苦笑)←「漂う悪臭」とか。
バジルは本当に他のキャラとの絡みがなかったな(苦笑)
シビルのオペラを見に行ったとき、原作はバジルもいたのに。
などなど。
なくても話は通るかもしれないけど、
原作のダイジェスト感が拭えなくて、
原作を読んでない人には何のことか、ついていけない部分が多いのではないかと思う。
全部入れていたら、上演時間がオーバーするのもわかるけど。
脚本も良かったので、後ちょっとが惜しい。
時間じゃなくて、舞台の使い方の問題じゃないかな?と思う。
舞台全体の一体感と言うのはすごく大事だと思うのよね。
その辺が初演作品の荒削りさなんだと思うので、
ぜひ再演してこの辺のストレスを解消して、
滑らかな展開になったらいいなぁと思う。
最初、ウンテさんにドリアンのwキャストの話が来てたと聞いて、
ウンテさんのドリアンが見たい気もするけど、
あのダンス部分をどうするか問題だなぁ(爆)
とりあえず、ジュンスの除隊後の再演を待つしかないのかな。
そのときはやっぱりバジルとヘンリーはジェウンさんとウンテさんでお願いしたいな。