This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

ringhun的「子午線の祀り」レポ~千秋楽

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ラスト子午線。
千秋楽の「子午線の祀り」行ってきました。

ロビーにいると、出演者の方々がウロウロ。
あら、スタンバイするには少し早いと思っていたら、
そのうち、主要の役者さんもウロウロ。

あ、あれ?成河くんもいる?

階段のところで成河くんと鉢合わせして、私も何も言えませんでした。
口の中で「がんばって」とか、「義経素敵です」とか、
もごもごしているんだけど、全部飲み込んじゃいました。

お客さんと話をしたり、些細なちょっかいを出してみたり、
成河くんに限らず、いろんな役者さんが、それぞれ舞台前の時間を楽しんでいる。
どうもそう言う演出になっているようなのはわかっていたんだけど、
話をしているのをみていると、イイなって思ったりするんだけど、
やっぱり出演前の役者さんに声をかけるって行為が私には無理でした。
この後の壮絶な舞台を知っているだけにね。
それに私自身が、舞台前に気持が削がれそうで嫌っていうのもあったし。
でも、開演前から観客を巻き込んで、時空を越えようとする演出おもしろい。

少し浮き足立ったロビーを後にして客席に座ると、なんだかドキドキドキドキ。

ああ。

私、なぜかとても緊張しているみたい。
ただみているだけなのにね、千秋楽に緊張している(^_^;)

そして開演。

1幕の群読の成河くんをガン見しつつ(笑)
萬斎さんの演技に心奪われ。
若村影身の可憐さにほっこりする。
國太郎宗盛、コミカルさが前面に来るけれど、所作すごく綺麗。
G列上手、みんなの演技が細かいところまで観えて嬉しい。

・・・お隣さん、早々と夢の国に行ってしましたけど(笑)

トークショー観たせいもあって、
若村影身が殺されて、地の声を発するところに目が釘付けになりました。
ああ、なんて言う声。なんて言う演技。
民の恨み、悲しみが、彼女の声を通して知盛にのしかかる。
その声は、あの時代の民の声ではなく、
現代で苦しむ民のの声そのものに聞こえて、
まるで自分も叫んでいるような錯覚になりました。

1幕前半はわりと重く静かに進行するイメージがあったけど、
なんだ、すごくドラマチック。
影身の存在が急に大きくなったような気がしました。←今頃ですみません。

村田民部がまた、古狸っぽさがアップ。
オヤジがもそもそ話しているように観えて、
セリフは一言一言明確で、なんて綺麗な滑舌。

私は最初の馬を射殺そうとするシーンの民部が好きなんだな。
あの場面の彼は、一番颯爽としていて、一番心がまっすぐだったから。
平家の旗色が変わるたびに、彼の態度も歪んで行って、
・・・ラストのあれになるワケだ。

後半、漸く成河義経の登場は、
17日とはまた変わって少しまたやんちゃに戻ってました。

やんちゃというか、イライラしている義経
それは、景時がものすごく口うるさく、
ウザかったからっていうのもあるんだろうな。

今井さんのラスト景時は本当にウザかった。
頼朝だけに忠誠を誓った武将は、義経の存在そのものが邪魔でしかなくて、
何より鎌倉殿の弟っていう事実が、憎くてたまらなかったように思えた。

景時の執拗な嫌味や嫌がらせは、義経のイライラにしかならなくて、
終始イライラしていたように感じた。

そのくせ、「鎌倉殿の~」とか言い出すと、急に眼をキラキラさせて、
可愛い弟キャラに変貌。
それを武蔵坊に窘められると、今度は武蔵坊を通して兄に食ってかかる弟で、
もう可愛いとしか言えない(汗)

「どうすればいいのだ」のところは、
本当にどうしたらいいのかわからないっ!って、
ちょっとキレ気味に、心の置き場所を探していた。

17日の憂いの義経の方が私的には好きなんだけど、
そうか、そこにやっぱり落ち着いたか。
戦さ場しか居場所がない悲しさと言うより、
それならやってやるって言う感じの、自暴自棄感が強かったけれど、
それでもやたら騒ぎ立てる前半の義経とは違い、
柔らかな甲の声を使い分けして、とても聞きやすかったし、
天才と未熟が交互する姿は、彼らしかったような気がします。

と、ここで終演の成河くんのメッセージを見て、
この部分がとても彼本人と義経が重なって、
今更ながらちょっと胸熱になってしまった。

2幕冒頭は、若村さんにどっきん。
白く長い衣を羽織り階段を上がる姿は、まさに浮遊しているように見えました。

天を上る影身の魂。

トークショーで言ってた通り、
階段はすでに若村さんの身体の一部でしたね。素晴らしかった。

さて、義経の方は、イライラは頂点に達していて、
最初の景時との口論で「帰りおろう!」と叫んだ後、
憤然と帰る景時のあとを一瞬追いかけようとして、←前はただ階段降りるだけ

三郎に「もう一太刀食らわせますか?」の一言で、気持ちを抑える。
あの一瞬にきゅんとしてしまった。

その後も、三浦の介の話に貧乏ゆすりしたり、落ち着きがなかったりで、
今回、いつも我慢できている景時の「与太者」と三郎たちを嘲る言葉に、
あの時なぜあんなにキレたのかよくわかったし、
あそこでで景時も大人気ない言動の理由もよくわかった。

2人ともお互い、相手の気持ちの追い詰め方に力が入っていて、
本当にウザかったから(笑)
ウザい演技対決ww。
あそこが2人のイライラのMAXだったというのもよくわかった。

そして五郎が来た時、義経の気持ちは全て五郎に向く。
1人残された景時のイライラが、
この後の鎌倉殿へのチクリになる理由も納得できる。←そこわかちおおお
照明から外れたところでの景時の陰湿な表情、怖かったです。

そして義経の方は、待ち続けたものが来た喜びが怒鳴り声や仕草に溢れていて、
本当に可愛いったらないんですけどっ。
櫛崎船の話に「なになに!?」と問い詰めるあの声が今も耳に残って離れなくて、
何かの折にあの声が浮かんで来て、
1人ほくそ笑む怪しい人になっちゃってます。←なんで?

開戦前の平家軍と、開戦の群読、さすがG列、迫力すぎて仰け反りました。
船頭に立ち平家と睨み合う義経を仰ぎ見る贅沢さ。ああ、目福。

能登の守の武勇シーン、1つだけ加えて欲しかったのは、義経との対決。

能登殿、今更に人を殺していとう罪なつくり給いそ。
それほどまでによきかたきか。」

知盛の言葉に、片っ端から源氏の兵士を討ち落としていた能登の守は、
「よきかたき」である義経を道連れにしようと義経の船を探し出すが、
義経はひょいと船から船へと飛び移り
能登の守から逃れたという、「義経の八艘飛び」。

だからこそ、いわゆる「雑魚」である源氏の郎党を捕まえて道連れにした、
彼の無念さ…悔しさと、
何より平家を滅ぼす義経の神気がよく現れるのになぁ・・・と思ったりして。
いやいや、そこは義経が主役じゃないからね・・・(涙)
↑単に成河くんが飛ぶのが見たかっただけww

3幕の村田民部は本当に素晴らしかったです。
やっぱり民部はキーマン。
シェイクスピアはあんまりよくわからないけれど、
そんな私でもわかるハムレット的な民部のセリフがいい。

勝ち目がないとわかった時みせる迷い。
一瞬の迷いに「魔」がさした結果。「民部、こころがはぐれてしまいもうした。」
このセリフの村田民部が好きです。←私はSじゃないですよぉ~

義経も最後の登場シーンは、彼にとって最も気運上昇の瞬間で、
追い詰めて続けて来たものが目の前に現れた高揚と、
それによって漸く我が身が救われるのだという安堵感。

ラスト義経は、そこに武将特有のギラギラ感がプラスされておりました。
目指す御座船を睨み、武者震いに涙ぐむ。
ラスト義経は、ここだけ涙を見せまして、義経の追い詰められていた心と
この後の運命に、胸が痛くなりました。

対照にここで滅びる知盛。
ああ、やっぱり萬斎さんはすごい。若村さんも。

知盛の最期の心のあがき。
そして縋り付きたい知盛の手を無碍に突き放す影身の言葉。

「非情の相」を語る若村影身は本当に素晴らしい神々しく、
「非情の相」そのもので、
それを受ける知盛の動揺と悟りは、「非情の相」と対峙する者全てのそれでした。
切なく、悲しく、あがいても抗うことのできない無力感。

その中で、知盛はそれを影身を見てそれを受け入れるんだけど、
観ているとき、実はこの「影身よ~!」という叫びが嫌いでした。
なぜかその叫びによって知盛が急に安っぽい男になってしまうような気がして。
でも違うんだよね。影身=天だから、彼の叫びは天に向けた叫びなんだよね。
うまく言えないけれど、こうして終わってしばらく経ってから、
漸くあの叫びが胸にストンと落ちたような気がします。

そうして彼が叫び入水した後現れる、影身と同じ姿の女の登場。

彼女によって、時代の真ん中にあった視線を俯瞰に飛ばし、
時の流れの中に、登場人物だけでなく、
観ている私たちもこの子午線の描くドームの中に入れ、
永遠なる「非情の相」と対峙させる。
しんと静まり返った舞台に響く彼女の言葉が胸に響いた。

すごい世界観。すごい演出。
強い力にグイグイと引き込まれるのに、
物語に没入しようとすると突き放されて、
一歩引いたところで彼らの物語を見つめるしかない。
そのくせまた、突然、天の声によって、
「あなた」は「私」にされて、舞台に引き込まれる。

ああ、これもツンデレの一種なんでしょうか?←その例えって?

引き込まれ、突き放され、引き込まれ、突き放され、
翻弄された私は、終演後、グッタリ疲れてしまうんだけど、
また、あの世界に飛び込みたくなる。
そしてただいま、猛烈子午線ロス中。

しばらくは、子午線のセリフが不意に頭に浮かんは消えるけれど、
それもまた楽しんで、余韻も堪能したいと思います。