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舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

ringhun的「子午線の祀り」感想~3

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2017.7.17 13:00開演
3度目の逢瀬。

今回の席は1階後部座席のセンター。
舞台全体を真正面から見ることができる良いお席でした。
役者さんの顔をよく見えるけれど、今日はオペラグラスも駆使。
おかげで、前回2回よりも深く物語に入り込むことができました。

公演も後半に入って、萬斎さんややお疲れ?お顔がややおやつれになっている模様。
知盛はほぼ出ずっぱりだし、
役者だけでなく演出家としても舞台に携わっているのだから、
お疲れも仕方がないでしょうね。あと5公演。怪我なく頑張ってほしいと思います。

今回一番印象に残ったのは、やっぱり義経
先の2回に比べて、随分オトナな義経さんでした。
キリリとした眼。一途でまっすぐに遠くを見つめ、曇りない意志はいつものままで、
でも、あちらこちら飛び回るガチャガチャ騒ぎ立てるやんちゃ坊ではなく、
しっかり腰を据え、感情に流されず冷静にいつも何かを思案し、
緻密な計算を元に奇策を遂行する天才的な知性を携えた勇将という感じで、
高貴なカリスマを迸る。

郎党が彼に惚れ込むのもよくわかるし、
景時が彼を妬み目の敵にする気持ちもよくわかる。
前回の義経が黄色い炎なら、今回の義経は青い炎のような気がした。

今回はトークショー付きで、その中で成河くんが義経の声について語った時、

「「甲(カン)の声」を出す時、普通は高く強く出すけど、
義経は高くて柔らかい声が必要で、これがまた技術が高くて、日々勉強です。」

と、言っていて、前回までの義経と今回の義経がなぜ違うのかすごく納得できた。
「高く柔らかな声」によって、「天魔王」の面影がすっかり消えて(失礼)
成河くんの作り上げる義経像がくっきりと浮かび上がったのね。
今回の義経は、舞台では語られない彼の人生がまざまざと浮かんでくるんですよね。

変わって一番「おっ!」っと思ったことは、
1幕最後の「一体どうすれば良いのだ?」の下り。
今までの駄々っ子のように(失礼)喚き立てるのではなく、
タメを作り、思案を巡らせ、
それでもわからず呆然と「どうすればいいのだ・・・」と呟き、
「鎌倉殿の・・・、後白河院の・・・」と、だんだん憤り、
大粒の涙を零しながら、「俺は一体どうすればいいのだっ!」と叫ぶ。

・・・ああ、泣くよ、泣くよね。それは私も泣く。
八方塞がりな彼の立場に、こちらも胸が締め付けられてしまう。

天才なのに、天才だからこそ、認められない義経の孤独さがせつない。
彼の憤りに答えられないけれど、それを痛いほど理解して、
彼を心から支えようとする武蔵坊の優しさが切ない。
ここの星武蔵坊は本当に好き。

そして、河野軍の援軍が来た知らせが来た時、
前は援軍への期待に目を輝かせたけれど、
今回は、それよりも瞳に強い決意を感じました。

義経の心沸き立つ場所、それは戦さ場だ!」

と、辛い胸中に止まらない涙を抑えることもせず、
自分の決意を持って自分を言い聞かせる。

ああ、彼はもう戦場にしか自分の居場所がないことをわかっているんだなぁ。
だからこそ、先陣にこだわるんだなぁ・・・。

そして2幕終盤、知盛を裏切り民部が義経の船にやって来て、
目指す御座船を教える下り、
義経は勝ちを確信して、御座船を見つめて嬉し涙を流すんですよ。

それはそれは綺麗な涙で。
1幕最後の憤る涙と違い、キラキラしていて
(1幕の大粒の涙もキラキラしてたけど、違うの)
希望と安堵に満ちた涙。

でも、実際はここから彼の「非情の相」が始まってしまうわけで、
それを知ってる私たちは堪らなく切ないのよね。

トークショーで、成河くんは「義経の非情の相」には
意識しないように演じているって言ってたけど、
だからこそ、あの涙で、哀しさが際立ってくるのでしょうね。
それにしても、この舞台で成河義経が泣くとは思わなかったので、
すごくドッキリしちゃいました。次はどうだろう?やっぱり泣くのかな?
それとも今日が特別?

アフタートークで、いろんな話が出て来ましたが、
影身の若村さんのお話がとても興味深く。

影身は、最初に死ぬことで、生身の人間、地の声(虐げられる民の声)、
天の声と、存在を変えて、「非情の相」を表現していくんですが、
2幕、階段の一番上で源平の争いを見つめている影身=天の視線で観ることで、
「非情の相」のセリフがよく理解できたと言っていたのが印象的でした。

知盛、義経、そして影身を通して、「非情の相」という潮の流れ。
最初は知盛という流れ、そして義経の流れ、
そして彼らをじっと見つめる影身の姿を借りた天。

それを萬斎さんたちは「月の女神」と呼んでいたけれど、
彼女の目線に立つことで、
東流、西流、そして俯瞰と、視線が変わることで時や場所が変わり、
彼らの流れだけではなく、
私たちをも包む「時」という大きな「非情の相」が見えて来て、

「われらたまゆらの人間が、
永遠なるものとの思いを交わしてまぐわいを遂げ得る、
それが唯一の時なのだな?影身よー」

知盛の叫びが、そのままこの作品への私たちの叫びでもあるんだなぁ・・・と、
しみじみと思ったのでした。


っと、漸く先週の感想書けた(^^)

これから最後の逢瀬であります。
至高の時間を堪能させていただきます。

よろしこ。