This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

「黒蜥蜴」東京千秋楽~ringhun的感想。

イメージ 1


ラストとかげちゃん🦎
ああ、堪能いたしました。千秋楽、本当に素晴らしかった。
中谷さんはセリフを「詩」だと言っていたけど、そうやってとらえると、
彼女の言葉は、キラキラと詩となって、音楽となって耳に心地よく
時に彼女の心情を伝え、時にBGMとなって、雨宮や早苗の心情を盛り立てる。

中谷黒蜥蜴は傲慢で自信家で大胆なカリスマ女賊でありながら、
少女のように純粋で臆病で浅はかで愚かな女。
様式的なのに感情的な矛盾を抱いている黒蜥蜴が、
三島の書くセリフととても合っていて素敵だった。

イメージ 2


観る人によって、その解釈は様々だろうけれど、私は千秋楽をみて、
より雨宮と黒蜥蜴の繋がりを色濃く感じた。
どうしようもない「孤独」を抱いた2人。
雨宮は盲目的に黒蜥蜴の愛を求め、
黒蜥蜴は決して裏切ることのない雨宮の愛に甘えていた様に思う。
甘えていたからこそ、雨宮を感情のはけ口にしていた。
幼い姉が幼い弟にする残酷な仕打ちのように、彼が悶え苦しむ姿を愛おしく思う。
今日の彼女の言動にはそんな「愛情」を感じた。

でも歪んだ愛情は、相手には伝わらないのよね。
愛しても愛しても愛されない空虚さに身悶え、どんどん歪んでいく雨宮。
セリフはあまりないところが多い雨宮だけど、
彼の歪んだ心と、自分を追い詰めていく様子が彼の仕草や表情から伝わり、
どんどん引き込まれていった。やっぱり成河くんは無言の演技が素晴らしい。

そして、2人は早苗と明智にそれぞれ惹かれていく。
惹かれては打ち消し、打ち消しては惹かれるその様子は、
表裏と言うか一心同体と言うか、姉弟と言うか・・・。
雨宮には苦痛しかなかっただろうけれど、
彼女にとっては彼は一番近い身内のようなものだったのではないだろうか?
でも、最後の選択で、彼らは生と死に道を分かつ。

イメージ 3

早苗(途中からニセの早苗)は、素直に感情を吐露し、
孤独な雨宮の心を黒蜥蜴への恋心ごと包み込む。
その懐の深さに母のような愛を感じた。
ああ、設楽早苗のここがすごく好きだった。
この早苗(ニセだけど)の愛なら、
黒蜥蜴に囚われ頑なに心を閉じていた雨宮の心も開くよね。

前回観た時の成河雨宮は、夢から覚めたように早苗と愛し合うように見えたが、
今日の彼は、早苗(だからニセだけど)のその懐の深さにほだされ、
黒蜥蜴(死)からの呪縛を解き放ち早苗(生)の手を取ったように見えた。

イメージ 4


一方、頑なに心をみせない明智
最初は物足りなさを感じたけど、淡々と探偵としての仕事をこなすことで、
黒蜥蜴が恋にのめり込んでいく姿が際立つのよね。

「ダイヤのように私が入っていけない・・・そんな人いるかしら?
もしそんな人がいたら私は恋してしまうだろう。
そうしたら、私は私でいるためにその人を殺してしまうしかないだろう。
私の心はダイヤ。・・・でも、もし私の中に入ってくる人がいたら?
私は私でいるために私を殺すしかないのかしら?」(そんな感じ?)

そのセリフの通り、自分が自分でいられるように、
黒蜥蜴は明智を殺そうとしたり、自らの命を絶つ。

「真実を聞かれたら私は生きていけない。」
「僕は・・・」

最後に明智が自分の心を伝えようとした時、黒蜥蜴はその口を押さえ、

「言わないで。あなたの本当の心は聞かなないで死にたいの。」
と言うのだけど、その一言があまりに切なくて涙が出た。
黒蜥蜴と言う女が、可愛くて切なくて泣けた。
この最後を見せるために、明智は頑なでなければならないのだと思った。

主役は黒蜥蜴だ。と思った瞬間だった。
明智は彼女を輝かせるための引き立て役なのだ。
それでいいのだ。

イメージ 5

そして、雨宮は黒蜥蜴と対比させる存在で、
幸せのために自分を変えることは愚かで見苦しいが愛おしく、
頑なに自分を貫くことは、儚く悲しいが美しい。
三島の美学って、こう言うことなのかな?と思ったのでした。


イメージ 6

そして、私が一番好きなシーン。
写真があったから残しておきます。
1幕ラストのこのシーンは、続々血が湧きます。