This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

地点「シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!」

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本当は「三姉妹」にも行きたかったのだけど、物理的に無理だったので、

「シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!」に言ってきました。

地点デビュー。

しっかり地点洗礼受けました笑

衝撃でした。噂には聞いていたけれど、これほどとは、ね。

常連さんからのお話では、この作品は「通常の地点とは少し変わっている」とのことだったけれど、

だからこそ、初地点がこの作品で良かったような気がします。

元々はロシア文学がとても苦手な私。

推しの成河くんがオススメしていなければ、多分行かなかっただろう。

だけど、結果来て良かった。

鈴の音と「ばっしゃ、ばっしゃ」の掛け声とともに、私のロシア文学嫌いは吹っ飛んでしまった。

 

観る決め手となった「三姉妹」のPVで見た、奇妙でものすごい身体表現はないものの、

「馬車馬」である俳優陣の「馬」っぷりに、目が点になりました。

「地点語」と呼ばれる台詞回し、止まらない「馬」の動き。ぐるぐると走り回り、

時に足並みをそろえ、時には何頭か置いてきぼりにされ、追いつき、またバラバラになる。

セリフといえば書簡を読むだけなんですが、

濁点や吃音のような台詞回しとその動きを見ているうちに、

いつのまにか私も身体が揺れて一緒に馬車に揺られていました。

←後ろの人の迷惑なのわかっているんだけど、気がつくと小さく揺れてしまう(^◇^;)ごめんなさい。

 

とにかく楽しかった。楽しかったというのは語弊があるだろうか。

書簡の内容は、残酷で過酷な内容が綴られていて、立ち寄る地方で生きる人々の生活の悲惨さや、

そこを巡る旅の辛さ苦しさは、絶望しかないのだけど、

チェーホフがそれさえも楽しんでいるように見えたのですよね。

走り続ける馬車は、人生のようで。

絶望という時代の流れに嘆き悲しむよりも、

それに逆らわず流れに身を任せ走り抜けようとする命の力強さを感じたのです。

そしてそれは現代の私たちの時代とも重なって、

今、私たちがこの時代を生き抜くための希望を感じたというか。

 

絶望の中の希望。

いつでも考え方次第で、幸せにも不幸せにもなる。

チェーホフを読んだことのない私だからこその感想かもしれませんけれど、

私はそこにとても胸が踊ったのでした。

帰る途中、Amazonチェーホフの「シベリア旅行」を購入。

私のチェーホフの入り口となるか。

 

こうして私の世界は広がっています。

そもそも、成河くんの「カルチベートチケット」で始めて教えてもらった「地点」。

そして、ブログで紹介された「三姉妹」を読んで行きたいと思ったのが始まりでした。

いつも新しい世界を私に教えてくれる成河くん、ありがとう。

私は確実にあなたに育てられておりますww

2019 上半期まとめ

おひさしぶりの更新です。

今年ももう半分終わったけど、なんだかすごくバタバタした上半期でした。

頭を整理するためにも、みんなを真似て上半期をまとめたら、なかなか大変なことになってた。

 

1月
スリルミー (2)
SOML(韓国)
ミッドナイト(韓国)

2月
イヴ・サンローラン

3月
アランガ(韓国)(5)
光化門恋歌(韓国)
ジギルとハイド(韓国)
더데빌(韓国)(2)
パガニーニ(韓国)
リチャード三世
Blue/Orange

4月
Blue/Orange(5)

5月
ピカソアインシュタイン
キンキブーツ
木の上の軍隊
ボッコちゃん(韓国)
ジギルとハイド(韓国)
キャッスル(韓国)
キンアド(韓国)

6月
ピピン
SMOKE(シアターウエスト版)
エリザベート(2)
朗読「やまなし」
朗読「銀河鉄道の夜

韓国ミュージカル:9作品15公演
韓国演劇:1作品1公演


日本ミュージカル:6作品8公演
日本演劇:6作品11公演

 

日本でのコンサート、ライブ:7

韓国でのコンサート、ライブ:1


計22作品35公演

コンサート8公演

 

 

でした。

渡韓は減らしているつもりで、全然減っていなかった。あれ?こんなにがまんしているのに。


上半期舞台ベスト5

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⭐️スリルミー

 

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⭐︎Blue/Orange

 

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⭐︎アランガ

 

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⭐︎더데빌

 

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⭐︎光化門恋歌


次点

⭐︎木の上の軍隊
⭐︎エリザベート

 

大賞

 

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🌟Blue/Orange

 

最多観覧作品

 

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🌟Blue/Orange:6回

 

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⭐︎アランガアランガ:5回

 

最多観覧俳優

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🌟成河(10回)

 

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⭐︎カンピルソク(7回)コンサート含め(8回)

 


相変わらずの偏愛っぷりだけど、少しずつ守備範囲広がってる。
こうやってみると、作品とコミュニケーション取れてる作品が上位になるなぁ。
それはもちろん興味を持つからこそのコミュニケーションなんだけど、ね。

私には初見の衝撃よりも、何度も接して得られる深い理解の方が重要なんだと思う。

 

そういう意味で、「Blue/Orange」は、振り回され、考えて考えて、そして語り合った分

想いもひとしお。「演劇」とは何か?という問いまで突きつけられて、今もそれを考えている。

そこまで考えさせてくれる作品は他にはないな。本当に大賞にふさわしい作品でした。

 

エリザベート」が次点なのは、まあ、下半期と半々という点と、「Blue/Orange」を見て、

大劇場作品について、気持ちがちょっと引いているというのもあります。

 

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意外すぎたのは「光化門恋歌」笑

これが入るとはね。

コミュニケーションも何もなく観た初見の「衝撃」を受けて引きずって、

行く度に号泣したこの作品は、

作品も役者も、曲も、そして観客の反応も、全て理想で夢だった。

大劇場で、こんなにも広い客層が一体になって泣いて、笑って、歌って、踊ったことがとにかく奇跡で、その中に私も入っていたと言う嬉しみ。これは多分、何度見ても何度も号泣すると思う。

 

本当にどの作品もそれぞれよくて、比べるなんてできない。

私の気持ちがどれだけ傾いたかと言う点に重きを置いての選出なので、偏愛と言うより他にないな。

 

1番観たのは成河くんだというのは疑いの余地なかったけど、

ソクさま(カンピルソク)を怒涛の短期集中で観てたの笑った。

これは韓国ミュージカルの驚異的作品掛け持ちによって起こる現象だけど、本当に驚愕する。

そしてそのどれもクオリティ高くて、韓国にはこういう演劇モンスターが群れをなしていて、

恐ろしい国だよね。好き。

 

「Blue/Orange」感想2〜オモテとウラ

 

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4/11(木)ソワレ

E列センターでの鑑賞。

 

初めてオモテ側からの鑑賞。

当たり前だけれど、ブルースとクリストファーの位置が反対で、違和感と言うか新鮮というか。

彼らが何をするのもいちいち「へー」ってなる。

観る位置が違ってたって基本的に同じ舞台を見ているのに、この全く違う感覚いったいどうなっているんだろう? 

もちろん、3人とも毎回同じ演技をしているわけではないのだから、たまたまなのかもしれないけれど、ウラ側みた前回2回と、オモテ側から見た今回ではガラリと解釈が変わってしまったのだもの。

 

右から見る表情と左から見る表情は違うし、ウラ側からは全然気にならなかったブルースの指輪が、オモテ側から見えるとやけに目につく。←そこかっ!

 

ウラ側では背中しか見えなかった部分が、オモテ側では表情が見えるし、

ウラ側で見えていた表情が、オモテ側では背中しか見えない。

その意味とは。

 

なぜだかわからないんだけど、オモテ側から見たブルースは、とても「良く」見えた。

物語の伏線には、差別やエゴ、欺瞞、裏切りが蠢いているんだけど、それよりも、真っ直ぐに患者と向き合おうとする純粋な医師としての熱意の方が強く感じられて、医師のプライドや白人である事の優越感があるくせに、うわ滑りに寄り添っていた前回までのブルースと真反対の印象に自分でも驚く。

 

その「熱血ロバート」がいつ手のひらを返すのかと見ていたら、ラストまでそれを貫いて、

結果、一生懸命頑張る研修医が、様々な現実問題にぶち当たって、傷つき、それでも立ち向かっていくお話に見えてしまった(笑)

 

もちろん、今回成河くんの演技がそっちの方向で演じていたのだろうけれど・・・。

それでも、その後観た人と話をすると、やっぱりウラから観た人とオモテから観た人と解釈が全然違って、それがそごく面白かった。

 

いや、やっぱり主人公はブルースなんだよなぁ。←今更?
まずブルースありきで、それに合わせてロバートとクリストファーが演技を変えている印象。
熱血で正義感の強いブルースに対して、ロバートは臭いものには蓋をしようとするご都合主義者。
だけど、最後にホロリと零す嘆きに、かつて彼もブルースのような純粋な誇りと信念を持っていたことを匂わせる。


クリストファーは、キーワードに対して人格が変わる音が聞こえるような気がした。
気まぐれに変わって混乱してるのでなく、やはりそこには変わる意味があり、彼が抱える問題を通して彼は=社会そのものなのだと思った。
理不尽で、底の見えない深い闇を持つ社会という壁が目の前に立ちはだかり、

心折れそうになって自暴自棄に暴言をクリスに叩きつけたブルースが、ロバートの中にも自分と同じ想いを見つけ、同志として彼への尊敬を復活させる「ロバート、ロバート・・・先生」のセリフ。

でも、ロバートに差し伸べた手は、切実な助けを求めていたのに、同じ想いを持ちつつも、ロバートはブルースの手を取らない。

ロバートは信念よりもやはり現実を選んだから。現実の闇は変えられないと痛いほど知ってるから。「処方箋」を書き、「勇気を持ってやるべきことをやれ。」と言って送り出すことしかできないロバートに、苛立ちよりも切なさを感じた。

 

手の行き場を無くし、立ち尽くすブルース。

ロバートとクリスのやりとりを背にオレンジの皮を食べている時、何を思っていたのだろうか?

最後にクリストファーが確実に病んでいる姿を見せながらも、

病院を出て行くのを止めることもできない自分の無力さ、理不尽な世の中の仕組みを痛いほど思い知る。顔を歪めた彼の表情に、自分が感じている現実の壁を想う。

 

「頼むよ・・・」

 

クリストファーが出て行ったと同時に自分が生き残る術に切り替えるが、
「お前が嫌い」と全否定されるブルース。

ロバートにしてみれば、かつての自分を見せられているのだから目も背けたいだろう。


ロバートの拒絶の前にオレンジの皮を剥くブルースの手に怒りを感じる。

怒りに半ば握りつぶされたオレンジ。汁を滴らせるオレンジを頬張る彼の顔に決意がみなぎり、
この時初めてブルースはパワーゲームを自分から仕掛ける。


「告発しまず。」

でもこのゲームはロバートと同じ穴のむじなになったわけじゃない。

ロバートを睨みつけるまっすぐな瞳に、
信念を貫くための怒りの反撃なのだと思ったら胸が熱くなった。

 

私的にとても好きな結末。

これが初見だったら、胸をすく結末に満足して帰ったと思う。

だけど、カテコに拍手を送りながら「その結末でいいの?」と成河くんに問いたいと思ってしまったのは、前回までの結末を知っているからこその意地悪さかもしれない。

 

でも、裏から見ていたら友だちに聞いたら、全然違う感想だった。

ウラとオモテ。

左右対称に見えるその見え方は、そのまま登場人物の裏と表が見えるんだろうか?

次回また確かめてみたい。

 

 

Blue/Orange まとめと感想1〜3/31と4/7

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Blue/Orange

 

ブルース:成河

ロバート:千葉哲也

クリストファー:章平

 

沼にハマることはわかっていたんだけど・・・。

2回見たところである意味「スリルミー」よりも深い沼のような気がする。

これ、ヤバイやつやん。

そんなわけで、自分の中のまとめを兼ねてこまめにまとめようと思います。

 

1回目:3月31日(日)マチネ ウラ側2列目のセンター席

2回目:4月7日(日)マチネ  ウラ側最後尾下手席

 

ここまでの感想と、ポイントまとめです。

 

◼️ストーリー


医者と患者、白人と黒人、支配するものとされるもの・・・

境遇の違う3人、ブルース、クリス、ロバートの3人の三つ巴のパワーゲーム。

というか、正確に言えば、クリスの言動に振り回される2人の話。←おおざっぱすぎ。

 

HPによるストーリーをお借りするとーーー

 

ロンドンの精神病院。

境界性人格障害のために入院していたアフリカ系の青年クリス(章平)は、研修医ブルース(成河)による治療を終えて退院を迎えようとしている。しかしブルースには気がかりなことがあり、退院させるのは危険だと主張していた。

上司のロバート医師(千葉哲也)はそれに強く反対し、高圧的な態度で彼をなじる。納得のいかないブルースはクリスへの査定を続け、器に盛られたオレンジの色を問う。

彼はそのオレンジを「青い」と答えた――

 

◼️登場人物


クリストファー

アフリカ系の青年。境界性人格障害の発作的症状を労働中に起こし、

病院に強制収容され、セクション2(最大28日間の治療を要する )指定されている。

彼にコミュニティはなく、家族もいない。


彼には2人に対して何か関係を持とうという感情はない。

言うなれば、2人の中心にある支点。重りなんだよなぁ。

それなのに、感情の揺らぎでフラフラと動くから、

その先でバランスを取る2人の立ち位置も常に危うく、その身を守るごとく態度を変えるから、

見ているこちらも振り回され、今どんな状況なのか常に頭をフル回転しないといけない居心地の悪さ。


彼の診断名、境界性人格障害

彼の人格が変わるのは、自分を守るための防衛反応であって、そこに彼の意思はない。

ただ、心に負った傷の原因となる言葉から自分を守るように反応する。

黒人、もしくはそれを罵倒するような言葉

気狂い、もしくは自分を否定するような言葉

家族、もしくは自分が孤独であることを指摘する言葉

 


ブルース

1ヶ月前に精神病院就職したばかりの心療内科の新人研修医。

仕事に対する情熱と誇りを持ち、純粋に病気と向き合おうとしている。

結婚もしたばかりで、夢と希望に満ち溢れ、上司とも上手く付き合い、

次のステップへ順調に進む野心もしっかりある。

白人の中等階級。常識的で一般論を唱えるいわゆる普通の善良な人。

若さと情熱で正当性を猪突猛進に振り回す。怖いもの知らず。

 


ロバート

ブルースの上司。師匠で、友人でもある。

それなりに力も持つ病院の上層階級の人。ロバートが目指す目標でもある。

一見気さくで人の良さそうで、実は利己的で野心家で狡猾な狸親父。

しかし世の中の仕組みを知っているからこその一種の防衛本能でもあり、

己の保身と医師としてのプライドの間で常に揺らいでいる。

 


◼️意見の相違

 

ブルース:統合失調の疑いを感じ、入院を延長させてさらに検査するべきだと確信している。

ロバート:疑いだけでは入院延長はできない。ベット数や経費の問題からも、

                  彼に課せられた28日間が終わったら退院させたい。

 

→イギリスの精神病院では収容した患者に「セクション」というランクをつけ、

     そのランクにより、収容日数と治療が決定される。

      クリストファーは「セクション2」と診断され、規則に則り28日間の収容治療を終えて、

      明日退院する予定・・・というところから舞台は始まる。

 


◼️ブルースとクリスの関係

 

ブルースは彼の症状に疑問を持ち、純粋に治療の継続が必要だと考えているが、

どこか医者としてクリスを見下した感を感じる。

クリスの境遇に同情し、心の傷を癒して病を治してやりたいというまっすぐな気持ちも感じつつも、

自分が隠れていた病気を見つけた高揚感と、「俺が治してやる」という傲慢さが匂う。

そして、クリスの「俺が黒人だからっ!」という叫びに「違う!」と言いながらも、

彼に対して差別的な視線を送っている。そして、それに彼は自覚がない。

クリスは支離滅裂で破天荒な振る舞いで、正常と異常の境を行ったり来たりしながらも、

ブルースの心を全て見透かしているように見える。

もしかして、彼の心の傲慢に反抗するように、人格が入れ替わっているのかもしれないとさえ思う。

 


◼️ブルースとロバートの関係

 

上司と部下。師匠と弟子。

個人的にも親交を持つ仲の良さ。→お互いに下心ありの親交。


ブルースの情熱と実力はロバートも認めている。

だからこそスーパーアドバイザーになろうとした。

でも、彼の馬鹿正直さは自分の足を引っ張る邪魔な存在になるとわかれば、

容赦なく切り捨て、利用する。

 


◼️ロバートとクリスの関係

 

人格がころころ変わり言動に信憑性がないのもわかっているはずなのに、

ついそれを鵜呑みにしてしまうロバート。

でもそれは、ブルースを疎ましく思っている邪な心がそうさせるのかもしれない。

そんなロバートを唆すように、ブルースの言葉を歪ませて囁くクリスは、

実は悪魔の化身じゃないかとも思う。

そしてそんな囁きに飛びついて、歪んだ言葉をさらに歪ませて

クリスに植え付けるところが浅ましく、醜い。そしてゾッとする。

人を陥れるには最高で最悪な画策。でもそれはそれは諸刃の剣。結局ミイラ取りがミイラになる。

そんなロバートは浅はかで滑稽だ。でも笑えない。

 

 

◼️身が凍る恐怖、そして怒り

 

発せられた言葉が誰かの憶測や願望、そして画策によって湾曲されることの恐ろしさ。

そんなつもりじゃなかったのに、想いとは裏腹に、歪んだ言葉だけが一人歩きしていく。

同じセリフが、全く違うニュアンスの言葉に変わることを見せつけられて、

人ごとではない恐ろしさに身が縮む。

 

でも、多分、「冗談」とか「比喩」とは、どこかでそう思っていることの証でもある。

根底にあるブルースの心。「違う」と否定すればするほど肯定される。

ロバートに湾曲される前から、クリスはそれに気がついていたし、傷ついていた。

だから、ロバートによって画策されたクリスの告発は半分嘘で半分本当なんだ。


出る杭は叩かれる。

足元をすくわれる。


そして歪んだ考えを植え付けられたクリスは、心を閉ざす。

不信感に心を閉ざした彼に何をどう伝えても、何も伝わらない。

「違う」「そうじゃないんだ」

それは半分本心で半分嘘。全部本当ならそんな言葉は出てこないんだ。


暖簾に腕押し。糠に釘。

 

辛い。喪失感。焦れば焦るほど空回りし、心を開けば開くほどそっぽを向かれる。

無力感、虚無感。

彼を思う心だって本心だったはずなのに、もう一方の本心が爆発する。

 

心無い酷い言葉をクリスに投げつけるブルースを見て、最初は卑怯なタヌキおやじだったロバートが

急にまともな大人に立場の逆転する不思議。

 

「なんでこの病院にはクリスのような若者で溢れかえっているんだっっ!」


この一言にロバートの医師としての良心が本心だと気づかされて胸が熱くなる。

ブルースでなくても「ロバート・・・ロバート・・・先生」と言いたくなる。

 

国への病院への社会への、どうしようもない叫びに、胸を突かれる。

病んでいく若者たちを救うことのできない無力感。

ロバートだって卑怯なことをしたけれど、卑怯な奴ではないのだ。

かつては彼も患者と向き合っていた姿が見えて、切なく共感する。

それなのに、初回観た時は「それなら、ロバート、あなたはどんな答えを出すの?」と

切実に答えを求めていた私の心を代弁するように、差し出だされたブルースの手を、

唾を吐くように一瞥してスルーするロバートに突き放されたような悲しさを感じた。


でも2回目の成河ブルースは、クリスへの差別とエゴがずっと見え隠れしていたので、

ここのクリスへの酷い言葉は「あ〜あ、とうとう言っちゃったよ。」だったから、

急にいい人になった千葉ロバートの一言がとても重く、その答えに納得せざる終えなかった。

決して賛成ではないけれど。

本当は何が必要なのかわかっている。

でも、できないならどうするべきか。→安楽死の法則=できるだけ楽な状態にしてやること

 

「勇気を持って」

それが唯一の処方箋。

それは無責任な言葉ではなく、彼らができる精一杯の誠意なんだよなぁ。


結局、何も変わらないクリス。

限りなく危うい未来を見せるような言葉を残した後、

不安そうに出て行く彼を、「大丈夫」と送り出すロバートと何もできないブルース。

それは、今の社会の危うさを重々感じながらも何もできない私たちそのものに見えて薄ら寒くなる。

 

何かできないのか?

それが最善なのか?

そんな問いかけをしながら見ていると、クリスが出て行った後、残った2人が答えを出す。


目には目を。歯に歯を。

同じ穴のムジナ。


「それでいいんかいっ!」って、コレ、怒っていいんだよね。

舞台の間中ずっと、彼らの抱える問題に自分を重ねて、舞台と禅問答していたのに、

最後に投げられたこの結末に、2回とも悶々としてスッキリしない気持ちで舞台を後したけれど、

 

でもそれも今の社会の仕組み。

怒りを持って、自分はどうするか。

「こんな世の中だけど、生き抜くために、じゃああなたはどうする?」って、

それはそちら側からの問いかけってことですかね?

 


◼️次回の課題

 

じゃあ、どうすりゃいいの?

光化門恋歌

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光化門恋歌。

その昔、東京の明治座でユノがやっていましたね。私はヒョンリルさんで観ましたが、

その時とはお話自体が変わっています。

昨年演出をガラリと変えたと言うので興味あったんですけど、スケジュール合わずに観れず。

ジヨン姐さん観たかった。、再演となった昨年11月は、枠空いてるしソクさま出るし、

ちょっと観ようかな〜なんて軽い気持ちで観に行ったら、予想外のボディブロー食らってノックアウトされたのでした。

 

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《インターパーク紹介》

昨年最も多くの観客が選択して共感した最高の興行ミュージカル
2018年秋になると、再び一緒にする時間旅行、ミュージカル「光化門恋歌」

★2017年の公演期間わずか4週間で10万人の観客動員!
★昨シーズン毎回3000席をいっぱいに満たし、最高の有料のシェア100.8%の興行を記録した国民ミュージカル!
★世代を超えて、すべての愛を受ける大韓民国の代表作曲家故イ・ヨンフンの名曲で咲く感性大作!
★最高の創作!ソンウン演出、キム・ソンス音楽監督が起き出す最高のハーモニー!
 
《あらすじ》
死ぬ1分前。もう一度戻りたい瞬間を探すミョンウは、
彼を助ける思い出旅行をガイドするウォルハ(月下)との記憶の旅へ。
ミョンウは今、死に際に立ち、緊急治療室で最後の心肺蘇生中なのだ。
彼の意識は「記憶の展示館」を訪ね、そこから人の縁を管理するウォルハと出会う。
彼の案内で記憶を巡りながら、ミョンウは初恋の恋人スアとの記憶と会い、若い頃に戻っていく。


2人は愛を深めつつあったのに、光化門でのデモに巻き込まれ、暴力的な鎮圧に抵抗したスアは、

白骨団(私服警察官)に連行されてしまう。
ミョンウは恐ろしさに竦んでいる間に、スアを連行されてしまったことに自分を責める。
それ以降、ミョンウは軍に入隊し、スアは学生運動に身を投じ、
2人の恋はその後進展することなく別々の道を辿り、恋しさだけが募っていった。


ウォルハの案内でミョンウは、幻想と記憶、現実が交差する微妙な状況の中で、
自分の傷とひとつずつ向かい合っていく・・・。

 

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11月に観たのはこちら

 

中年ミョンウ:カン ピルソク

青年ミョンウ:イ チャンドン(VROMANCE)

ウォルハ(月下):イ ソクフン

 

ソクさまミョンウは、youtubeで観ていいなと思っていたので、楽しみだったのですけど、

楽しみだった以上に楽しませていただきました。

出てきた瞬間からもう大好きすぎたけど、それ以前にこのお話がめっちゃツボにはまって号泣。って言うか、嗚咽出てるし(苦笑)もう、何というか、ミョンウにめっちゃ共感しちゃったのですよね。

 

イヨンフンさんの曲はすごく耳障りが良くて、すっと気持ちに入り込んでくるけれど、

やっぱり懐メロには違いないし、お話も踊りもどこかベタで垢抜けない(だって懐メロだから)

でもなんて言うか、「ちびまる子ちゃん的」と言うか、「サザエさん的」と言うか、文句なしの王道なのですよ。素直に共感できる普通の人で、ほっこり油断したところに、真理とも言えるメッセージがドスンとストレートに飛び込んでくるから、もう泣くしかないじゃない。

 

カーテンコールで、みんなで踊り狂うから、そこで気持ちを切り替えられたけど、

涙で腫れた目でペンライト振りながら一人で歌い踊るおばちゃん、かなり怪しい・・・。

←この日はペンライトが全員に配られてたんですけど、他の日はなかったんですね、知らなかった。

 

VROMANCEってグループも知らないんだけど、イチャンドンくんの青年ミョンウは、

思った以上によかったです。

っていうか、ほぼノー予習で挑んだくらいに期待していなかったんですよねー。←ごめん。

彼の青年ミョンウは純粋でまっすぐで、幼さゆえにキラキラしていて、

幼さゆえになにもできなかった憤りと悲しみがよくわかる。

青春の甘酸っぱさ。青リンゴのような青年ミョンウ。

 

イソクフンさんもはじめましてでしたが、ウォルハがこれまた意外と良くて。

なんだかカッコいいイメージがあったので、コミカルな感じどうかな?って思ったんですよね。

ちょっと鼻に着きそうな自意識過剰さの中に、優しさが見え隠れして、

それが見えそうになると照れくさそうにする不器用なウォルハ、素敵でした。

 

そしてソクさまことカンピルソクさんの中年ミョンウ。

ああ、もうこれはとにかく私には最高でした。

青年の時の素直さ、まっすぐさをそのまま残したキラキラな笑顔。

そして、その時の傷を抱え、哀愁に満ちた憂い顔。

それ故に切ない声色で紡がれる歌。

切なさ。あどけなさ。キラキラ。悲しみ。愛おしさ。

私が観たかったソクさまの演技が一度に観られる美味しい作品笑

そして何より、とにかく幸せそうなソクさまが観られてそれが一番嬉しいかったです。

ソクさまはもちろん、切なさや憂いを演じたら右に出る者がいない故に、

切ない救われない役が多いんだけど、だからこそ、私は彼が素直に幸せな役を観たかったんですよね。

彼の笑顔は無条件に、私も幸せになれるから笑

 

そんなわけで、全くの無防備状態でボディブロー食らったような感動を受けて、

ずっと心に引っかかったままだったところに、今回3月遠征で、大田公演が重なってて

しかも私的ベスト布陣なキャストだったこともあり、思い切って遠征しました。

この時、やはり遠征を考えていた方とお知り合いになれたことも、思い切れた大きな要因だったなぁ。

(金曜ソワレ公演だったので、帰りが心配だった)

 

その私的ベスト布陣はこちら

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(地方公演はキャスト表すらなかったㅠㅠ)

 

中年ミョンウ:カン ピルソク

青年ミョンウ:チョン ウクジン

ウォルハ(月下):キム ホヨン

 

地方遠征は3度目ですが、大田公演、全くなんの広告も出てなくて、

劇場来るまでに観たのは、旗1枚。

劇場の外には別のポスターや垂れ幕が貼られていて、本当にここでやるのか心配になったほどですが

大きな劇場がほぼ満席で、男の子も女の子、おじいちゃんおばあちゃんから子供まで、

本当にいろんな年齢層の方で埋められた席が嬉しい。

 

そして舞台は11月に観た時よりも更に良かったーーー!

前回観たソクフンさんのウォルハも嫌いじゃなかったし、そのジヨンさんのウォルハも見たかったけれど、やっぱり私のウォルハのイメージってホヨンさんだったから、なんだかつっかえていたものがスッと通ったようなすっきり感。

本当に中性的で、なんだか人を食ったような小悪魔的なウォルハ。でも、そのはしはしに不器用な優しさと思慮深さが見え隠れして、彼を観ているだけでも物語に引き込まれます。

 

でもそれ以上に私的に今赤丸急上昇中のうっちんことチョンウクジンくんの青年ミョンウが

とんでもなくチャーミングで、「かわえぇ〜!!かわえぇ〜!!」連発!

絶対に自分が可愛いことを自覚しているあざと可愛さが、憎らしいほどツボをついて力が抜けます。

スアに一目惚れした時のかわいいさ。

一緒にじゃれ合う時のかわいさ。

そして、自分の無力さでスアを守れなかった時の慟哭。

兵役の訓練するときのへっぴり腰加減、学生デモと衝突する時の迷子の子犬具合とか、

シヨンに対して先輩風吹く時がまたかわいいし、

身悶えするシーン連発で、頬が紅潮してしまいますがな。

 

そこにソクさまミョンウが、そんなうっちんミョンウの様子に天然的ボケかまして、

ホヨンウォルハにツッコミ入れられると言う構図が、とんでもなくツボでノックアウト。

 

上手で可愛い💕下手で可愛い💕

なんだ〜!?この私得的舞台はっっっ!目がいくつあってもたりません笑

やっぱりこのキャスト最強!

 

ソクさまミョンウにはこの間以上に感情移入してしまい、ハンカチ絞れるくらい泣かされました。

伸びのある歌声。ソクさまの声は、優しんだけどどこかいつも哀しさを含んでいてそこが好き。

強風に吹き飛ばされそうで、でも、健気にそこに立つ小鹿のようなところが好き笑←子鹿ってww

 

物語は特に何かが起こるわけじゃないし、奇をてらった演出もスリリングな展開もなく、

終始穏やかでどこかおとぎ話みたいで、ドラマチックな舞台を見ている人にはつまらない舞台に見えるかもしれないけれど、  私は彼のミョンウがすごく好きでした。

 

何より、ソクさまがこれ以上ないくらい楽しそうだったのですよ。

もうキラキラとずっと輝いていて、この作品が好きなんだなぁ。

そんな彼を観たら、否応無しに好きになってしまったのでした。

あのキラキラ、ずっと観ていたかったな〜。

 

それは彼だけでなく、出ているキャスト全員が、やっぱりこの作品への愛に溢れていましたね。

みんなでミョンウの人生を讃えて、幸せだったねって肩を叩いてあげる、そんな愛に包まれて、

傍観者の私たちも幸せになれたのでした。

幸せをありがとう。

 

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思いがけず、出待ちでソクさまの愛も受け取って、さらに日本人のお友達もできて、

帰りのKTXの中でも、ホテルに帰ってからも、ずっとずっと幸せな気分でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

나쁜자석(悪い磁石)

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「나쁜자석(悪い磁石)」観てきました。

3年前に1度観て、衝撃を受けた作品。

初めての韓国での演劇に、言葉もわからないのに、ただただ涙した記憶があります。

あの時は、まだ知っている俳優さんが何人かいたのに、今回は誰一人として知らない若い子たち。

少々不安を抱えつつも、やっぱり観たくて当日券でトライ。

ふふふ、舞台が開いた瞬間、あまりの若さに場違い感MAXになりましたが、

やっぱりこの作品好きだなぁ。

 

ストーリーの方はスタンドバイミーみたいな、男の子の友情のお話で、

日本でも「淋しい磁石」という題目で公開されたことがあるそう。

 

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登場人物

ゴードン:カンチャン

心の傷を抱えて、やや内向的だが童話作家としては不遇の天才。

9歳の時に転校して来て、フレイザーたちと知り合い、19歳の時にフレイザーたちとバンドを組むが、

些細なボタンの掛け違いで自殺する。

 

フレイザー:ホンスンアン

グループのリーダー的存在。親は弁護士(あれ?医者だったかな?)で裕福な家庭の子。

しかしそれはそれなりに悩みもトラウマもあり・・・。

9歳の時にゴードンと知り合い、彼の物語に心を打たれ彼に興味を持つ。

しかし19歳の時に、彼が自殺したのは自分のせいだと自分を責めたまま

29歳になったそれを今も乗り越えられず堕落した生活を送る。

 

ポール:イカヒョン

フレイザーをずっと慕いついて来たのに、フレイザーは自分よりもゴードンを見てることが許せなかった。貧しい家の子で、成り上がる野望を抱いていて、だからこそフレイザーを慕ってたのか?というところもある。19歳の時、バンドの方向性でゴードンとぶつかり、フレイザーをけしかけて排除しようとして、そのせいでゴードンを自殺に追い込んだのに、そのあとバンドを辞めて出版社に勤めると、

ゴードンが残した童話を使ってひと儲けしようとする合理主義者。

だが、彼ももしかしたら彼なりに「作品を残す」ことによってゴードンを忘れないようにしたのかもしれない。

 

アラン:イムジュンヒョク

いつもみんなから下っ端扱いされながらも、いつも笑顔のアラン。

バカがつくほど素直でお人好しで、友達想い。

19歳のときに、ゴードンとの方向性の違いにどうしたらいいのか?と悩んでるフレイザーとポールの話を聞いて、「バンドから外す」と言うことをゴードンに告げた張本人。

そのせいでゴードンが自殺したことに、罪悪感をずっともちつづけながらもちゃんと社会に順応して

29歳の今、工場を経営して、19歳の時から憧れていた(?)ティナと結婚して幸せな家庭を築いている。

 

物語は彼らの9歳、19歳、29歳の3つの時間軸を行き来しながら展開していきます。

9のつく年は満ちる1つ前の数字で、一番魔に近い年齢なんだって。←トッケビで言ってたww

その不安定な歳に起こったさまざまなことが、起・承・転を経て未来に繋がっていく結になるところがすごいなぁと思う。

役者云々の前に、作品自体がもう好きすぎ。

 

前回自分なりに調べた時から、ゴードンの残した童話が好きすぎて、敷居の高い演劇に飛び込んだんですよね。結果、だいぶ撃沈したところもあったけど、

今回、ストーリーの詳しいあらすじを、つい友さんから教えてもらったことで結構ついていけたと思います。(詳しい資料くださってありがとうございます〜!!!)

観たあと、詳しいつい友さんともお話しして、やっぱり好きだー!となりましたね。

 

このお話は、合理主義者のポールが、ゴードンの残した童話を出版して、世界的に売り出すことに成功し、その印税を3人で山分けしようと声をかけたこと、

そして、アランがそれにかけて、9歳の時にみんなで埋めたタイムカプセルを掘り起こそうと持ちかけ、久しぶりに3人が揃うところから始まるんだけど、

フレイザーは、思いの外ヤサグレたダメ男で、9歳の時の純粋で子供らしいお山の大将だった姿と違いすぎて心が痛い。

落ちぶれた彼と立場が逆転したポールとアランとの関係性がまた切ないんだよね。

「なんでこうなっちゃったんだ?」

かつてはみんなを思いやり、引っ張っていたフレイザーが、今はみんなの手を払いのけて終始暴れていて、観ていて本当に痛い。

ポールはきちっとしたスーツに身を包み、今の立場に喜びを感じてる風で、フレイザーをやや見下した感じで、

アランは一番成功しているにもかかわらず、昔と変わらない天真爛漫さで、2人を迎える。

3人が思い出の桟橋で会うことで、心の奥底に沈めておいたそれぞれの思いが掘り起こされ、

そこに幻のように立つゴードン。

あの頃のまま変わることがないゴードンの面影と、時とともに変わってしまったものと、変わらないように頑張っているもの。そして、変わることも変わらないこともできないもの。

舞台に立つ誰に思い入れするかで、この作品の解釈も全く変わってくるんじゃないかな?と思うんだけど、私は、前回の時も今回もやっぱりアランだった。

 

小さい時から下っ端にしか扱われず、相手にされなかったにもかかわらず、

4人の友情を誰よりも大切に思っていたアラン。

彼がどんな境遇だったのかはよくわからなかったんだけど、

「愛されるためにはまず先に相手を愛する」彼の愛を求める孤独に胸が痛くなる。

彼が笑えば笑うほど、その笑顔が泣いているように思えて愛おしく、切なかった。

多分、他の3人が抱えていた全ての問題を、彼は一歩引いたところから理解していたと思われ、

全てを知っていた上で、なおも「友情」を繋ぎとめようとする姿はもう「固執」にも見える。

なぜに彼はいつも孤独なのか。

孤独だからこそ、愛に溢れ、ラストのカーテンコールで抱き合う3人を一番外側で抱きしめるアランに

その愛の大ききさを思いながら、抱きしめてあげたくなった。

 

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この回アランを演じていたイムジュンヒョクくんは、お顔もとても優しくて可愛くて💕

オバさん、すっかり好きになっちゃったな。←

彼の笑顔には人懐っこさと、哀愁が漂っていて、あれは魅力的よね。

 

ゴードン役のカンチャンくん(言いにくいな)は、物静かだけど、感情の襞の細かい人って感じがした。元々必要以上のセリフがない役だし、感情的にもならないけれど、彼は立っているだけで、

何かを訴えている気がして、唯一感情を露わにした廃校でのヒューゴへの怒りに、彼の抱える悲しみとトラウマが心に突き刺さって、あれは、フレイザーでなくても抱きしめたくなる。

 

フレイザーのホンスンアンくんは、9歳が一番良かった。

19歳は案外あっさりしていて、29歳は荒みすぎて見ているのが辛かった。まあ、フレイザーはそう見えれば成功なのかもしれないけれど、悲劇の中に自分を閉じ込めて、ゴードンの悲しみも、他の友人の声も何も見えないまま終わってしまった気がして、辛かった。

まあ、元々私はフレイザーが好きではないのだよ笑

 

前回はポールが一番嫌いだったけど、今回のイカヒョンくんのポールは意外と好きだった。

合理主義者で、ゴードンの死に対して最も罪悪感を感じていないポールなんだけど、

もしかして、ポールはポールなりに彼の作品を世に出すことで、「僕を忘れないで」と言っていたゴードンの言葉を生かそうとしていたのかな?って思ったりした。

それだけのいい人感が彼のポールにはあって、嫌いになれなかったのでした。←それがいいのか悪いのかはわからないけどww

 

4人はそれぞれ、自分にはどうすることもできない悲しみを抱えていて、だからこそ引かれあっていたんだよなぁ。でも、その悲しみは誰もが持っているもののような気もする。だからこそ、彼らに共感を感じるし、引き込まれるんだよなぁ。

 

ラストも見る側に解釈を委ねていて、過ぎ去った愛おしい関係なのか、これから紡ぎ直す未来を見るのか、うーん、私は迷ってしまった。

でも、これが、ラストの花吹雪の後残った種ってことだよね。

種は芽を出すか、出さないか。私たちの心の中に。 

 

 

 

 

2019.3渡韓のまとめ

今回の渡韓での演目

*アランガ4公演

*ドデビル2公演

*ジギルとハイド

*光化門恋歌

パガニーニ

*悪い磁石

 

今回、初の7泊8日の長期滞在。

観た舞台も10公演という最多の幸せな渡韓となりました。

前日までの多忙さに、半ばヘロヘロで飛んで、←いつものことだけど

果たして8日間も体が持つんだろうか?と心配していたけれど、それは杞憂に終わりましたね。

元気いっぱい、パワーもいっぱいもらって帰ってこれました。

 

舞台はいいな。

人によって見方が違うと思うし、ただの思い過ごしかもしれないけれど、

ミュージカルも演劇も、演じる役者さんと、私たち観る側との会話のような気がする。

会話なんて言うのはおかしいかもしれないけれど、私の頭の中で「こうだ」と思えば

舞台は次の瞬間に「だからこうなんだよ」と、答えくれる。

そしてまた新たに「これはどう思う?」と語りかけてくれて、

そうして、どんどん深みに入って行けるんですよね。

 

観る側と演る側のコンディションと相性とバランスが合うと、本当にいろいろなお話ができて、

いろいろな気づきにハッとします。

演る側のパワーをもろに受けて、受け止めきれずにぐったり疲れてしまうこともあるけれど、

私はこの「会話」がとても大好きなのです。

 

今回の舞台はどれも本当に、いろいろな「会話」を通して、たくさんの気づきをもらいました。

これってやっぱり、演者さんたちが魂込めて演じてくれているからですよね。

どの作品もちゃんと感想を書けるといいなと思っていますが、

今回の舞台の共通テーマは

「光も闇も人間の選択」

ってところでしょうか?

そう、「ドデビル」の中のセリフです笑

でも、どの作品にもそれが含まれていたと思います。

もしかしたら、どの舞台にもそのようなメッセージが含まれているのかもしれませんね。

逆にそれを伝えることが、舞台の使命だったりするのかな?

なんて思ったら、う〜んと唸ってしまいました。舞台って深い。

 

以前、成河くんがブログで「舞台上で鬼を見せることで、観客に疑似体験してもらう」

「演劇は、わたしとあなたの脳みそを使った遊びと思う。話をしよう。」っていうようなことを言っていたけれど、

「ああ、これがそういうことなんだ・・・」って、漠然とですが、体感したような気がします。

 

成河くんの舞台でなく、別の舞台で実感するなんて苦笑するしかないんだけど、

いや、言い訳するわけじゃないけど、彼の演技ではいつもどっぷり会話してますけどね。

どっぷり過ぎて自覚がなかった気がします。

今回は一歩引いてみてたからこその実感。

 

悲劇の意味とは。

悪が光る意味とは。

そして、人生を振り返る主人公の想いとは。

 

反面、素晴らしいパフォーマンスなのにどんなに一生懸命追っても、伝わらない舞台もありました。

それはそれで、娯楽性を追求して、何も考えず夢の世界に連れて行ってくれるわけですから、

どちらが正解というわけではないのだけど、私は少なくとも今回は前者の表現の方に惹かれました。

 

舞台は面白い。

舞台は深い。

だから舞台は沼笑