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舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

「Blue/Orange」感想2〜オモテとウラ

 

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4/11(木)ソワレ

E列センターでの鑑賞。

 

初めてオモテ側からの鑑賞。

当たり前だけれど、ブルースとクリストファーの位置が反対で、違和感と言うか新鮮というか。

彼らが何をするのもいちいち「へー」ってなる。

観る位置が違ってたって基本的に同じ舞台を見ているのに、この全く違う感覚いったいどうなっているんだろう? 

もちろん、3人とも毎回同じ演技をしているわけではないのだから、たまたまなのかもしれないけれど、ウラ側みた前回2回と、オモテ側から見た今回ではガラリと解釈が変わってしまったのだもの。

 

右から見る表情と左から見る表情は違うし、ウラ側からは全然気にならなかったブルースの指輪が、オモテ側から見えるとやけに目につく。←そこかっ!

 

ウラ側では背中しか見えなかった部分が、オモテ側では表情が見えるし、

ウラ側で見えていた表情が、オモテ側では背中しか見えない。

その意味とは。

 

なぜだかわからないんだけど、オモテ側から見たブルースは、とても「良く」見えた。

物語の伏線には、差別やエゴ、欺瞞、裏切りが蠢いているんだけど、それよりも、真っ直ぐに患者と向き合おうとする純粋な医師としての熱意の方が強く感じられて、医師のプライドや白人である事の優越感があるくせに、うわ滑りに寄り添っていた前回までのブルースと真反対の印象に自分でも驚く。

 

その「熱血ロバート」がいつ手のひらを返すのかと見ていたら、ラストまでそれを貫いて、

結果、一生懸命頑張る研修医が、様々な現実問題にぶち当たって、傷つき、それでも立ち向かっていくお話に見えてしまった(笑)

 

もちろん、今回成河くんの演技がそっちの方向で演じていたのだろうけれど・・・。

それでも、その後観た人と話をすると、やっぱりウラから観た人とオモテから観た人と解釈が全然違って、それがそごく面白かった。

 

いや、やっぱり主人公はブルースなんだよなぁ。←今更?
まずブルースありきで、それに合わせてロバートとクリストファーが演技を変えている印象。
熱血で正義感の強いブルースに対して、ロバートは臭いものには蓋をしようとするご都合主義者。
だけど、最後にホロリと零す嘆きに、かつて彼もブルースのような純粋な誇りと信念を持っていたことを匂わせる。


クリストファーは、キーワードに対して人格が変わる音が聞こえるような気がした。
気まぐれに変わって混乱してるのでなく、やはりそこには変わる意味があり、彼が抱える問題を通して彼は=社会そのものなのだと思った。
理不尽で、底の見えない深い闇を持つ社会という壁が目の前に立ちはだかり、

心折れそうになって自暴自棄に暴言をクリスに叩きつけたブルースが、ロバートの中にも自分と同じ想いを見つけ、同志として彼への尊敬を復活させる「ロバート、ロバート・・・先生」のセリフ。

でも、ロバートに差し伸べた手は、切実な助けを求めていたのに、同じ想いを持ちつつも、ロバートはブルースの手を取らない。

ロバートは信念よりもやはり現実を選んだから。現実の闇は変えられないと痛いほど知ってるから。「処方箋」を書き、「勇気を持ってやるべきことをやれ。」と言って送り出すことしかできないロバートに、苛立ちよりも切なさを感じた。

 

手の行き場を無くし、立ち尽くすブルース。

ロバートとクリスのやりとりを背にオレンジの皮を食べている時、何を思っていたのだろうか?

最後にクリストファーが確実に病んでいる姿を見せながらも、

病院を出て行くのを止めることもできない自分の無力さ、理不尽な世の中の仕組みを痛いほど思い知る。顔を歪めた彼の表情に、自分が感じている現実の壁を想う。

 

「頼むよ・・・」

 

クリストファーが出て行ったと同時に自分が生き残る術に切り替えるが、
「お前が嫌い」と全否定されるブルース。

ロバートにしてみれば、かつての自分を見せられているのだから目も背けたいだろう。


ロバートの拒絶の前にオレンジの皮を剥くブルースの手に怒りを感じる。

怒りに半ば握りつぶされたオレンジ。汁を滴らせるオレンジを頬張る彼の顔に決意がみなぎり、
この時初めてブルースはパワーゲームを自分から仕掛ける。


「告発しまず。」

でもこのゲームはロバートと同じ穴のむじなになったわけじゃない。

ロバートを睨みつけるまっすぐな瞳に、
信念を貫くための怒りの反撃なのだと思ったら胸が熱くなった。

 

私的にとても好きな結末。

これが初見だったら、胸をすく結末に満足して帰ったと思う。

だけど、カテコに拍手を送りながら「その結末でいいの?」と成河くんに問いたいと思ってしまったのは、前回までの結末を知っているからこその意地悪さかもしれない。

 

でも、裏から見ていたら友だちに聞いたら、全然違う感想だった。

ウラとオモテ。

左右対称に見えるその見え方は、そのまま登場人物の裏と表が見えるんだろうか?

次回また確かめてみたい。