This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

「グランドホテル」REDにハマってしまってさぁ大変(笑)




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さてさて、時代はもう大阪公演に向かっていて、
東京公演が終わってもう随分経ってしまいましたが、
やって来ました。
東京公演千秋楽。

開演前は人混み。

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人の波を縫って
室内のポスターをパチリ。

今日はわりと前目の下手サイド
残念ながら私の隣は主がおりませんで、
そこの穴が役者さんの目に留まりませんようにと、
心の中で祈りました。

でも、心配したけど、他の席はみんな埋まっていた模様。
良かった良かった。
だって千秋楽だもんね。

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RED2回目のこの日。
昨日の成河くんと彼方くんの話を聞いて、
台詞をしっかり聞こうと耳ダンボ。

全体を観ていた前回と変えて、
視線のポイントもしっかり定めて(笑)

下手は吉原さんサイドなんですが(^^;;
すいません、成河くんガン見で行かせていただきました。

でも、あんなシーンやこんなシーンと、
意外といいシーンが観やすくてラッキーでした。

前回はとにかく、
吉原ブライジングと彼方男爵が濃ゆくて圧倒されちゃったんですが、
今回はそんなこともなく、物語を純粋にどっぷり浸かることができました。

成河くん、こんな濃ゆい人たちの中で
あんな難しい主役をやって、取りまとめられたよね。
本当にすごいです。

REDを観たら、GREENの記憶が消し飛んじゃった。
みあねよ、アッキー(^^;;

物語としては、GREENの方が深みがあるのかもしれないけれど、
REDの濃ゆいキャストが起こすケミがとにかくすごくて、
は・ま・る・・・ヽ(´o`)

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成河オットー

あの時代にユダヤ人であることの意味
きな臭さを感じながらも、最後の煌びやかさが残る時代
オットーを通してそんな時代が見える。

多分、自分の命の宣告を受けてその足で、
衝動的に貯金をおろしてそのままホテルに来たんだね。
彼は絶望よりも希望を掴もうとする生のエネルギーが溢れている。


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彼方男爵

役に立たない「男爵」という身分を邪魔だと思いながらも、
「男爵」を捨てることができない。
破滅的な生き方を選び、それを楽しむ振りをして、
なげやりな人生を笑ってるけれど、
実は誰よりも生に固執している。

だから、死を目前にもがむしゃらに
人生の中に希望を掴もうとしているオットーが気にかかるんだね。
その姿に心の中の自分と重なる。
だから
彼にとっては最初から「心の友」なんだ。

社会にも運命にすら冷たくされている者にとって、
差し出された手には無条件で心を開いてしまうもの。
しかも、
「男爵」という物語の中でしか知らなかった煌びやかな身分
オットーにとって、男爵は憧れと希望そのもの。

彼を眩しそうに見つめる瞳。


正反対のオットーと男爵は、実は表裏一体。
だから身分を超えて惹かれ合うんだね。

この2人の関係とそれを紡いでいく中で揺れる心の襞には、
ぐぐぅーーーーっと引き込まれていってしまいます。


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グルシンスカヤ民代

もうそこにいるだけで、グルシンスカヤでした。
ステップからその仕草まで、全てがバレエ。
私が彼女に感動したのは、ジゼルを踊る下り。

足先も指の先まで行き届いた神経。
なのに、顔も筋肉も時代の流れを纏って、
美しいのに痛いというか、哀しい。

「アンコールを貰えなかったグルシンスカヤ」そのもので、
鳥肌が立つほどすごいと思った。
そこまで自分を曝け出すなんて、舞台は残酷で、そして素晴らしい。

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ライジング吉原

とにかく濃くって(^^;;
「かー!かー!」に圧倒されて仰け反りそうになります。

最初は社長としてのプライドをもって、
フェアであるべきだと思っているが、
追い詰められて一歩道を外したら、
箍が外れたように転がり落ちていく様がリアルで怖い・・・。

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フレムシェン真野

若くて可愛いフレムシェン。
だけど実は妊娠しているって、可憐で清純そうな外見と違って、
いろんな道を通り抜けていそうでもある。

可愛い中にも野望に満ちた小悪魔的な昆ちゃんのフレムシェンと違って、
向こう見ずで怖いもの知らずな青さと幼さがある真野フレムシェン。
彼女がもっているのは野望じゃなくて夢なのよね。
そんなところがかわいくて、
男爵が妹のように可愛がってしまうのも、
ライジング会社の腹いせに踏みにじってしまいたいと思う衝動も、
オットーが一緒に生きたいと思うのもわかるなぁと思ってしまう。


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エリック藤岡

シングルキャストでGREENよりREDは、扱いが軽いんですが、
群像劇の点を線に結ぶ大切なキャラ。
彼のことは、どのキャストもいいねって褒めているだけあって、
演技も歌も本当にうまいです。
朴訥で真摯なキャラをやらせたら本当にうまい。

彼のラストに歌う歌の歌詞が、本当に良くて
毎回涙してしまうのは、私が親だからだね。

Life can be grand,
Wide and hight as the heaven.

Life can be small,
as a seed in your hand.

原詞をこうやって書いてみると、その深さに沁みます。

大きな空を飛ぶか
小さな夢を追いかけるか

どっちもいいけど、
群像劇の点と点を線でつなげるのなら、
ちょっとやっぱりニュアンスが違うのかもしれません。

この歌詞だとGREENのラストの方が繋がるような気がします。
REDだったら、原詞に忠実な役の方がよかったかな?なんて。


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「友よ」

男爵は随分前からオットーをそう呼び、
オットーも投資の話をしている時に恥ずかしそうに応えたセリフだけれど、
本当の意味でふたりが「友」となったのは、財布の下りだと思うのよね。

思えば男爵の「友よ」の裏には、
どこか下心が見え隠れしているような気がして、
オットーが落とした財布をボーイからもらった時、
その下心に負けてしまいそうになるけど、
オットーが生きるか死ぬかのような必死な様子に、
自分にとっても死ぬか生きるかなのに返してしまう。

これは男爵の弱さであり優しさでもあるんだけど、
そういうことを含めてオットーは
ちゃんと男爵のことを見抜いていたんですよね。

「乾杯」のシーンの後、
はしゃぎすぎて発作を起こして
男爵に部屋に運んでもらった後、咳き込んだ時に、
彼、おそらく血を吐いたんですよね。
ハンカチについた血をぎょっとしたように見た後、
それを隠す。

自分に近づく「死」の気配を感じて、
諦めと同時に、改めて心に強く決意する。

彼にとって恐ろしいのは「死」そのものではなく、
「どうやって死ぬか」ということ。
文無しのユダヤ人の最期を嫌というほど知っている彼が、
人間らしく死ぬために必要なのは金だと思っている。

なのに、
ある意味命がよりも大切な財布を男爵が持っていたこと。
それは、男爵が盗もうとしていたことに気がついたのに、
気がつかないふりをして、
彼のプライドを傷つけないように金を渡す。
正当な報酬として。

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グルシンスカヤがネックレスを
「持っていっていいわ」と言っても、
持っていけなかったのは、
プライドの高さから、
人から施しを受けることができないから。

友達と思っていた男爵が自分の財布を盗もうとしたことに
失望と悲しみに一瞬、瞳を伏せながらも、
彼の心を汲み取り、
自分の心を託すように渡すんですよね。

それはオットーにとって男爵は唯一の友達だから。

男爵もオットーも心に気がついていて、
だから、自分の唯一の財産であるシガレットケースを託す。

あのシーンは、
男爵とオットーがお互いの心を託してるんだと思いました。

すごく好きなシーンです。
隣では、フレムシェンにブライジングが心ないことをしているのにね(^^;;
そこの対比がとっても意味深い。

1つの酒とグラスを2つのシーンで使っているんですが、
それが2つの人間関係が表裏であり、
「持てたもの」「持てなかったもの」をよく映し出していると思います。

劇中、様々な人間関係を対比している演出が幾つかあるのですが、
どれもみな、「持てるもの」「持たざるもの」を表していて、
これって、そのまま舞台のテーマでもありますよね。

なぜ、一方は「持てて」一方は「持てなかった」のか。

それは「信頼」「思いやり」「意思の疎通」?
人と人が心を紡ぐことに答えがあるような気がします。
今の世の中に必要なこと。
そんなトムのメッセージがいっぱい詰まっているような気がしました。

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そして常に「持たざるもの」側にいる(笑)
人でなしなブライジング吉原ではありますが。

歌の途中でグラスを倒してテーブルにお酒を零してしまった彼方男爵。
なす術もなく、気にしながらその場を離れた後、
フレムシェン真野、果敢にそこに座るけど袖を少し濡らしてたかな?

彼女が一度テーブルを離れた後、
フレムシェンを押し倒す予定の ブライジング吉原、
演技をしながらざっと手で押し流し、
ちっと舌打ちしながら手についた酒を振って飛ばしていました。
ふふふ、本当は優しいんだよね。←吉原さんは(*^^*)



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そして、最後に全てを「持っている」はずの男爵が「死」によって
「持たざる」側に引きずり込まれる。

それは新しい時代が切り開かれるこの時、
男爵だけは時代とともに消え去る「存在=身分」だったからだね。


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ちょっと違うシーンだけど

そして、時とともに新しい扉を開ける人たち。
その先にどんなことが待ち構えているにせよ、
今この瞬間の希望の光が眩しい。

「僕はもうすぐ死ぬけど」
「誰でも死むかってるのよ。クリンゲライさん。」

このフレムシェンのセリフが好き。
病気であることがリスクだと思っていたオットーを一瞬で自由にしたセリフ。
それを聞いた瞬間の、
鳩が豆鉄砲食ったようなオットーの顔。

そして、
パリへ一緒に行こうと誘ったオットーに
自分の妊娠を告白したフレムシェンに答えたセリフはもっと好き。

「それは・・・素晴らしい・・ね。
生まれたての赤ん坊って僕、見たことないんだ。
これは楽しみになってきた。」

この2つのセリフは対だね。

自分で自分を縛っていた2人が本当に自由になって、
希望に向かう幸せの鍵。

命が溢れてる。

そして、エリックの子供が誕生したと聞いて、
今まで死に包まれていたオットーの周りは命で包まれる。
喜びに歌うようなオットーのセリフ。
ああ、なんていい笑顔なんだろう。

人は心の持ち方次第で、人生は変わる。
そして、
それを支えるのは人との繋がりだってこと。

そんなメッセージを受け止めました。

ああ、泣けたぁ。
日本の作品で泣けたのはレミゼ以来かな。

すごくすごくいい作品でした。
奥が深くて中毒性がハンパなくて、
見れば見るほどまた次も見たくなる。

成河くんも彼方くんも「再演はないね」って言ってたけど、
ぜひぜひ再演して欲しいと、切に思います。