This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

ringhun的「子午線の祀り」レポ~1

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子午線の祀り」本公演行って来ました。
ふぅむ、やっぱりプレビューとは違う空気が流れてました。
なんて言うの?ずしっと腰が据わったというか。
ああ、プレビューは少し上ずっていたんだなぁってよくわかりました。

自分のこの作品への理解も深まったこともあるだろうけど、
プレビューの時よりも、知盛も義経も感情がよく現れてたような気がします。
セリフ回しのリズムや間、声色を駆使してその人物を表現すること。
より現代劇寄りになり、私にはとても心地よかったです。

成河義経は、基本は自分の現代劇なんだろうけど、
セリフがやっぱり歌舞伎の当て書きだから、
どうしても歌舞伎のリズムを周到しないといけない。
それはそれでいいのだけど、
彼の良さが抑えられてると感じたプレビューだったのが、
1週間経って、随分自分のものにしているような気がしました。
セリフに感情が乗る。パッ、パッ、と、次々変わる義経の表情が小気味好く、
彼が舞台に出ると、舞台の空気が変わる。
照明が当たっていないところでも、メラメラと燃える彼の心の炎が見えるよう。

萬斎さんは、「万作さんは青い炎、右近さんは赤い炎」と、
演じられた義経をそれぞれ表現してたけど、
成河義経は「黄色い炎、白金の炎」だと思った。
赤よりも熱く、一点突き抜けたような情熱。若さゆえの純粋で真っ直ぐな炎。
幼いと言えばそうなのだけど、
若さという眩しいほどの光に人は惹きつけられるのだと思う。
もちろん天賦の才があってこそだけど、ね。

でも成河くん、まだまだ、自分を抑えているような気がする。
新しい領域の中で、まだ様子を見ているような。遠慮しているような。
いや、自分を抑えなくてはいけない役ではあると思うけど・・・・。
それでも、成河くんなら、もっと自由に泳ぎ回れるように思う。
彼はできる子だもん。
次は息をするように演技をする彼が見られること、期待しています。
←いや、でもだからって、悪いわけじゃなくて、
    私は彼の義経がとても好きなんですけどね。


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でも何と言っても萬斎さんだ。 
独特の言い回し、独特の声。歌うように、息をするように言葉を紡ぎ、
知将知盛を表す。
プレビューのときは、やっぱり狂言的な感じを覚えたけれど、
本公演では、感情をあらわにする演技が所々に加わり、
現代的なリアルな演技に思わず目が釘付けになる。

1幕最初の息子知章の死を報告する知盛は、セリフはないが、
悲しみに溢れていて、思わず涙ぐんでしまった。
この悲しみは、子供を持ってこその悲しみだよね。
とてもリアルでグッと来ました。

そして、影身との秘めた恋心、大将軍としての立場に己の心を抑える切なさ、
2幕での、影身に一族への悲しみを吐露する場面は本当に良かった。

いつもはご贔屓さまへの偏愛で、物語を変えてしまう(笑)私ですが、
今回は、知盛に心が動くことしばしばで、
「やっぱり知盛が主人公だよなぁ。」と兜を脱ぎました。←何ソレ

義経が輝いてこそ、知盛も輝き、
知盛が哀しさに満ちてこそ、義経も哀しさを背負う。

義経と知盛は表裏一体で、光と影。
そしてともに、時という非常の相の中に流されていく運命。
いや、彼らだけでなく、
人間は、命は全て、非情の相の中に流されていく運命なのだ。

知盛と義経は、舞台の上で相見えることはないけれど、
交互に演じ重ねることで、お互いを磨き上げていく存在なのね。
どちらかが力が弱くても、強くてもダメなの。
とにかく懸命に義経を演じる成河くんを、大きな懐で受け止める萬斎さん。
そんなふうに感じました。頑張れ!成河くん!

そして、彼らを無限の愛で抱きしめる「非情の相」=影身こと若村さん。
ああほんとうに、若村さんは大きくて優しいです。
非情だと言いながら、なんて愛があるんだろう。
非情の相という名の、愛。

できる役者たちだけで紡ぐ世界だからこその、甘美な世界。
酔います。酔いしれます。

さて、次はどんなふうに感じるのかな?
次はトークショーもあるし、楽しみだっ!