This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

BLUE/ORANGE4度目の逢瀬

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4度目の逢瀬

 

4月17日ソワレ E列どセン

 

今日は本当に文字通りのドセン。

木曜の夜はやっぱりウラ側の空席が目立ったけれど、オモテ側はほぼ埋まっていたみたい。

1週間ぶりの舞台は、なんかずいぶん整理されているような印象。

舞台は日々進化。深化。

観ている私も深化。新鮮な驚き。

 

最前列ドセンなのに、物語の中にどっぷり浸からず引いた目線で演劇のことを考えている私に驚く。

いや、やはり舞台の上に立つ3人が、近くにいればいるほど突き放すからだろう。

これはそういう舞台で、彼らはそう言う役者。

 

とは言え、間近で拝ませてもらって、真面目に考えつつも

「ああ、成河くん、今日もなんてカッコいい顔なんだ〜」と見惚れている私もいる。

だって、だって、私は成河くんの顔が好き〜🎵(よしお風に)

 

今回のブルースは、おそらく医大生の時はトップクラスだったエリートなんだろうなぁっていう研修医くんでした。二枚目で頭が良くて、誰からも羨まれていたような人。

だから、プライドが高くて自分にとても自信がある。いけ好かないエリート笑

クリスとのやりとりは、あくまでも医者と患者で、自分の作ったマニュアル通りに押し通そうとする

ガチガチの石頭。 

 

クリスに寄り添いながらも、鋭い視線で彼を観察して、自分の仮説が正しいことをいちいち確認している。まるでコンピュータのデータを確認して満足しているみたいだと思っていたら、

2幕のクリスの担当から外されたことに対して、「僕の研究対象を奪って、自分の患者にするんですね?」と言うセリフになってて、ゾッとした。

ここ間違ったんじゃないよね?(前回までは「僕の患者を奪って自分の研究対象にするんですね?」だった)やっぱり?

少なくとも1幕のブルースは、「クリスという人間」ではなく、「統合失調症という病」とだけ向き合っていたと思う。嫌な医者。

 

クリスは、切り替えスイッチの音が聞こえてきそうだった前回と比べて、正気と狂気妄想の変わり方が滑らかで、境がわからなくて、観ている私たちもわかっているのに騙されてしまう。

章平くんのクリスはガタイが大きくてどっしりていて、うっかり受け止めようとすると食われそうで(笑)、凄まれると身が竦んで後ずさってしまうんだけど、無邪気(と言うかちょっとハイ過ぎ)で愛嬌もあって憎めなかったりする。

多分、欧米の映画なんかで描かれている黒人の典型なんだろうけど、←こんな言い方すると、舞台と同じように誤解される?

このノリは、私の目にはもう精神異常にみえてしまって、 なんでこれで解放されるんだ?って思ってしまうんだけどww

そうかと思うと、急に誰よりも冷静に真理をズバッと突いたり、誰よりも大きな懐で相手を包んだり、いきなり攻撃的になったり。自由。←コレが症状なんだけど

 

これは毎回思うことだけど、クリストファー役っていいなぁって思う。

そりゃ、難解な役だと思うけれど、舞台全部を好きに振り回して演じていて1番楽しそうだ。

そして、なんとなく成河くんがやっていたクリスを想い浮かべて頬や緩んでしまう。彼は振り回されるよりも振り回す方が楽しそうだもん。

多分、ウィルスミスとか、エディマーフィーみたいなおしゃべりでちょこちょこ小賢しい黒人くん。(初演ではやっぱりクルクルパーマをかけていたって聞いてさらに笑った。どんなん?)

んでもって、千葉さんとしゅうさんが、うるせぇやつだなってボヤきながらそれを全部受け止めてくれていたんだろうな・・・。幸せな妄想。

 

閑話休題

 

今回のクリスは、なんだかとても可愛い悪魔感がところどころあって、ブルースがロバートに裏切られて涙を流すシーンがあるんだけど、その時、肩を抱いてクリスが慰める。でも今回は、ブルースの頭をぎゅっと抱きしめて背中をポンポン叩いてやる。その時の顔があまりにも子供みたいに無邪気だから、ブルースも心を許していつもよりもクリスの胸に深く顔を埋めて号泣する。そこはなんだかジーンと涙が出そうになるのに、クリスってば、ブルースが次のセリフを言おうと顔を上げようとしても離さない笑

ブルース(成河くん自体?)、静かにパニックになってそこから抜け出そうとする。→クリスはさらに腕の力を強める。→頭が抜けなくてバタバタする。

 

なんだコレ?可愛すぎるじゃないかっっ!

 

最初はジーンとしていたのに笑ってしまう。

ブルースにしたら全然笑い事じゃないんだけどww

 

ロバートとの場面でも、ロバートが自分の研究を認めないブルースに対して愚痴をこぼすシーンで、

彼の話を親身になって聞くフリをする姿が逆転していて笑える。意外と懐の深いクリス。

それでロバートもクリスに心を許してしまうんだけど、結局、その言葉尻を歪めて使われて、お互い振り回されてしまう。悪魔。悪意がないから更に最悪。

 

ロバートは、初回から安定のちゃらんぽらんさで、こんな医者いないしっ!って叫びたくなる。

でも、露骨にちゃらんぽらんじゃなくても、こう言うオヤジいるよなぁって納得してしまう何かがあるんだよね。

んで、ちゃらんぽらんなくせに、セリフの端端に差物を忍ばせていて、油断していると斬りつけられる。本当に嫌なおじさん笑

でも、今回は浅はかさや狡さはあんまり感じなかった。

今回、彼の主張が御都合主義のクソ(失礼)じゃなかったってことがようやく理解できたこともあり、

彼は彼なりの正義を感じた。

 

だからこそ、ロバートとブルースの対立は、

どちらが何と言うのではなく、お互いの持つ信念をぶつけ合っていたように見えた。

 

そしてラストの「汝隣人を愛せよって〜」って、クリスが爆発させるところからのロバートの一言。

心に響きます。ブルースにも響いていた。

「ロバート・・・ロバート・・・先生」

ブルースは、今までそこでロバートに救いの手を求めて手を伸ばすのだけど、

今回はまるで自分の過ちを前に途方にくれているようだった。ブルースの完敗。

 

だけどそんなことはどうでもいいとでもいうように、その呆然としたブルースをスルーしてクリスに声をかけるブルース。

取り残されたブルースはオレンジの皮を食べ、ロバートはクリスに退院手続きをする。

まあ、ロバートにしたって、何もできないからクリスを手放しただけなんだけど。 

でも、こちらの演出の方が好き。

 

クリスが病院を出る時、本当にヤバいこと言うんだけど、クリスよりブルースに釘付けになる。オモテ側。

驚きから顔を歪ませるブルース。あそこで本当にクリスの手を離したんだな。

だからこその、扉が閉じた後の豹変。

 

正常異常、白黒、真実と嘘その境目を行ったり来たりしながら、その対立をグルグルとかき混ぜるクリス。

目の前にあるその色は、何色なのか。

誰かはオレンジに見えて、誰かは青、そして誰かはもしかして白に見えたりするのかも。

その色がぐるぐると交わることで、最終的にグレーになる。って感じかな?

 

そもそも、日本は単一民族国家だから(本当は少数民族がいるんだけど・・・それは置いておいて)

欧米が抱える人種差別思想の問題に実感がない。

頭では理解できるけれど、それは所詮机上の理論で心で理解できないから、最初に見た時、

そのことに病的に敏感な彼らのやりとりに違和感を感じていた。

クリスはともかく、ブルースは「なぜそこにこだわるんだ?」って。

後から、ブルースの奥さんはブルガリア人で、それは有色人種だって聞いて、少し納得したんだけど、

彼らが置かれた背景が想像しきれないところに、余計な疑問が生じてしまう。

いや、そう感じることも含めて、作品の狙いなのかもしれないけれど。

ついて行くもの側としては、結構この障害は辛いんだが、それは勉強不足ってことなんですかね。

すいません。もっと勉強します。