This is it

舞台大好き。映画も大好き。私の見たもの日記のようなものです。

3度目にしての「髑髏城の7人花」

イメージ 1

髑髏城。三度目の逢瀬。

インスタには2週間ぶりって書いたけど、あらあら、三週間ぶりでした(苦笑)

2度目の時も「あ、変わってる!」って思ったけど、
今回は随分変わっていましたね。

まず、小栗捨は、ずいぶん言い回しが変わっていました。
さらりとじゃなく、ざっくりっていうか。新感線ぽい台詞回しになっていて、
ようやく舞台が馴染んだなって感じました。

殺陣も息切れせずに素晴らしい立ち回り。
見得の切り方も、うん、馴染んでるぅ。

今までの中で一番、納得いく捨之介。


イメージ 2


一本気で、愛嬌があって、人懐っこくて。
でも、本能寺の変に間に合わなくて、ひとり炎の外から親方様の死を見た罪悪感。
天を失い、全てを捨てたと自分の人生を軽んじてみても、
人とのつながりも、自分の命も、自分の信念からも断ち切れない、
天魔王が言う通り、「何にも捨てちゃいねぇ。」奴なんだよね。
それは自分でも分かっている。
だから何にも言い返せない。どうして生きていけばいいのかわからないんだね。

そんな彼が、沙霧や無界の里の仲間と出会い、
自分の生きる道を見つけていく。ああ、この話はこういう話だったんだね。
捨之介がくっきりしてこそハッキリ見える。


イメージ 3


山本蘭兵衛は、だんだん鋭くなっていくような気がする。
体もしゅっとしてきたし(笑)やっぱり肉厚な蘭兵衛さんはちょっと違うもん。

見栄を切る所を見る度に、「ああ。太一くんの見栄が見たい・・・。」
と思ってしまうのは致し方ないのですけど、
全然違うもんね。蘭兵衛キャラが。
大人な蘭兵衛。「人」と「地」を取りまとめて「天」を支えていた
揺るぎない完璧な小姓「森蘭丸」。

「天」の名とは言え、信長の最期を看取ることなく生き残ってしまった彼の
悔恨と贖罪が、彼の蘭兵衛寡黙な彼から、匂うように心情が伝わってきました。

最初の登場の、どこか居心地悪そうな蘭兵衞の佇まい。
最初の見得の切り方の中途半端感は、
彼の中にまだ捨てきれない野心にがうずまいているからなのよね。

イメージ 5


天魔王に「森蘭丸」と囁かれた時のハッとした表情。
自分の中の野心が顔に出てしまったのを「怖い顔」と大夫に指摘されて、
「里を守るため」と自分に言い聞かせるように
天魔王の元へ行ったあの白い曼珠沙華の花畑の見得を切る。

でもそんなうそは、天魔王にはお見通しで、すぐに剥がされてしまう。
天魔王の巧みな言葉に本心を引き出されたようで、
本当は夢見酒など飲まなくても、彼の心は決まっていたような気がしました。

でも彼の野心は、天を取ることではなく、親方様の仇を取ること。
と言うより、自分を置いて先に逝ってしまったことへの悲しみが
トラウマになってるんだよね。
自分の生きる場所ではなく、死に場所を彼は探していたんだよなぁ。

里の襲撃の躊躇なさ。
その後の天魔王の裏切りも、
その天魔王を身を呈して助けた気持ちも、そういう彼の気持ちが根底に
明確にあるのが感じられるから、その行動もセリフもストンと落ちてくる。

今まで、蘭兵衞にはモヤモヤ感があったので、
なんか今回はスッキリした気分でした。


イメージ 6
どうでもいいけど、これ見てカリオストロ思い出したの私だけ?

そして、成河くんの天魔王は、今回も安定の素晴らしさ。
冒頭の敦盛のシーン、「あれ?少しお疲れ?」って思っちゃったけど、
その後はやっぱりすごかった。

天魔王という存在が、彼の中で明確に確立されたっていうのはすごく感じた。
エリザベート」のルキーニの時もそう感じたけど、
見るたびに物語にはない「彼の人生」が役に肉付けされていて、
すごく深いところまで見せてくれるから、
本当にゾッとするような存在感に釘付けされる。

彼の本当にすごいところは、身体能力ではなく、
すべての行動に裏付けされた「意味」を明確に役作りするところだ。

それは殺陣の一太刀、足の運び1つ1つに感じるから一瞬も目が離せない。

今回の天魔王は、「魔」だ。
彼に天を取るという野心はない。
それが今回ははっきりわかって、すごく納得した。

下衆で姑息な男だけど、どこか遠くから全部を見通していて、
一番人間臭い泥臭さを持ちながら、人間らしさを感じない。
つかみどころのない不気味感。

「自分も天になれると勘違いしてる。」と捨之介は言ったけど、
それにしては天魔王の行動に執着心を感じなくて、
そこにすごく違和感を感じていたんだよね。

でも今日はっきりした。
彼が求めているのは、ただの乱世。
世の中を引っ掻き回して混沌とさせるのが楽しいだけの「魔」なのだ。
わざと芝居掛かった「兄者!」
「全て親方様ののため」と叫んでも上滑りの嘘くささが臭う。

イメージ 4


こいつ、一体何を考えてるんだ?

彼の意図が掴みきれない気持ち悪さ。

でも、仲間に引き入れて置いて、冷たい視線で蘭兵衞を見る彼。
イギリスからの援軍が来ないことを知っても、薄笑いを浮かべる彼。

蘭兵衞を「お前も俺のコマの1つにすぎない。」
と言った時のその表情が、彼の本当の顔なんだと思った。
蘭兵衞も親方様も、彼にとっては世を弄ぶコマの一つに過ぎなかったのだ。

人の心の闇に巣食う「魔」の顔。

捨介助との対決の最後、負けたことも、夢が潰えたことも、悔しがらず、
死を決意したわけでもなく、この世への執着心もなく、
ただあの場から消え去った彼は「魔」の幻影が消えたように見えた。

もしかしたら、天魔王は、幻?「魔」の化身だったか?と思うほどに。

でもそうすると、その後の話も説得力を増すんだよね。
引っ掻き回すだけ混乱させられた世の中を、
魔に屈することなく、真っ直ぐ生き抜こうと頑張る「7人」
「髑髏城の7人」は、彼ら地を這いながら懸命に生きる人間のことだと思ったら、
この物語にものすごく深さを感じた。

イメージ 7


成河くんの天魔王は狂っていない。
周りを狂わすのだ。
下衆で卑怯な狂人と見せかけて、
誰よりも冷静で冷酷な瞳で全てを見下ろす姿に、
恐ろしさと共に、言いようのない陶酔をしてしまった(苦笑)
←そこはファンだからww

どれもが嘘で、実態のないつかみどころがないのに、
恐怖と混沌だけが舞台に残る。

悪というよりやっぱり魔なんだよな。

すごいもの見せていただきました。
あと2回、私はどう感じるだろうか?

この後の逢瀬も楽しみで仕方がない。